監修弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士
- 問題社員
様々な理由から欠勤が多い社員がいて、お悩みの方も多くいらっしゃるかと思います。
そのような社員を安易に解雇してしまうと、不当解雇となるリスクがあります。
今回は、欠勤を理由とする解雇の可否や減給の可否などについて、具体的に解説していきます。
目次
欠勤が多い社員を解雇できるのか?
単に「欠勤が多い」という理由のみをもって即座に解雇することはできません。
労働法上は、適法な解雇と認められるには厳格な要件があります(労働契約法16条)。
そのため、容易に解雇をすることができないというのが実情です。
普通解雇の場合
普通解雇は、従業員の欠勤が重なり労働契約上の義務を果たすことができない(=債務不履行)状態にある場合に、会社側から解約の申入れを行うことを指します(民法627条1項)。
普通解雇については、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえる場合でなければ、解雇権の濫用として無効となってしまいます。
懲戒解雇の場合
懲戒解雇は、従業員が会社内の秩序を著しく乱したことに対する制裁として行使される解雇です(労働契約法15条)。無断欠勤が長期に及ぶ場合(2週間以上が目安です)や欠勤の理由が悪質である場合などに検討されます。
懲戒解雇は就業規則の根拠がある場合には退職金の一部または全部を不払いとすることができる等、普通解雇と比べて従業員にとって大きな不利益を課す処分です。
そのため、懲戒解雇の有効性においては、普通解雇よりも厳格な判断が求められます。
就業規則に定めがなければ解雇はできない
労働法基準法89条によれば「常時十人以上の労働者を使用する」会社では、「解雇の事由」に関する事項について就業規則に明記する必要があります。
そのため、就業規則に定めがない限り、解雇をすることはできません。
欠勤を理由とする解雇が有効とされた裁判例
欠勤を理由とした解雇が有効とされた裁判例を紹介します。
事件の概要
- 事件名:東京海上保険事件
- 事件番号・裁判年月日:東京地判平成12年7月28日
- 裁判所:東京地方裁判所
- 裁判種類:一審(判決)
裁判所の判断
この事件は、従業員が5年間のうち傷病欠勤が約2年4か月にもおよび、長期欠勤明けの出勤にも消極的な態度を示したり、遅刻や離席も多かったりしたために解雇(普通解雇)となったというものです。
解雇の有効性が問題となりましたが、裁判所は従業員の「上司らが指導を続けてきたこと」や当該従業員の「勤務実績、勤務態度は変わらなかったこと」、「出勤して労務提供を提供する意欲」(原文ママ)が「見られなかった」ことなどを重視し、当該解雇は「解雇権の濫用に当たるとはいえない」と判断し、解雇の有効性を認めました。
ポイント・解説
裁判所は、欠勤を理由とした解雇の有効性の判断にあたっては、欠勤の日数のみならず、欠勤した理由の悪質性や欠勤により生じた影響等、諸般の事情を考慮しているところがポイントです。
解雇の有効性を検討するにあたっては、個別具体的な事情を正確に把握したうえで、会社側においても従業員への指導や尽くすべきことを尽くしたが従業員に改善が見られなかったというプロセスを経ることが重要です。
欠勤が多いことを理由に減給はできる?
欠勤が多いことを理由に減給を行うには一定の制約があります。
欠勤中の賃金は支払う必要がない
欠勤中の賃金は支払う必要がないという原則があります。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。そのため、従業員が欠勤していた期間の給与を月の給与から差し引くことは法律上可能です。
体調不良の場合は原則として認められない
ただし、減給がペナルティとしての側面を有するような場合には注意が必要です。
例えば、体調不良で欠勤をした場合に、欠勤した期間に応じた給与を差し引くことは問題ありませんが、それに加えて「罰金(ペナルティ)として追加で給与から差し引きする」ことは原則認められません。
重すぎる懲戒処分は無効となるおそれ
また、無断欠勤などを理由に懲戒処分として減給となる場合であっても、労働基準法上の制約があります。
具体的には、労働基準法91条に、「減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」と定められており、減給の上限が決まっています。
欠勤が多い社員の適切な対応方法
では、欠勤が多い社員に対してどのような対応をすればいいのでしょうか。
具体的には下記のような方法をおすすめします。
欠勤の理由を聞く
従業員本人と面談を行い、欠勤の理由を確認しましょう。
適切な対応を行うにあたっては、欠勤の理由がどのような事情によるものなのか(例:家庭の事情、体調不良、単なる怠慢)を会社側が把握する必要があります。
欠勤の理由が体調不良の場合は休職を提案する
もし、体調不良が原因で欠勤している場合には、就業規則に基づいた休職を提案しましょう。
会社側が出勤を促した結果、従業員の体調が更に悪化してしまった場合には、会社側の安全配慮義務違反を問われてしまうリスクがあります。
欠勤に正当な理由がない場合は注意指導を行う
欠勤に正当な理由がない場合(例:単なる怠慢)には、会社側から注意指導を行いましょう。
ただし、注意指導の事実や具体的な内容については、書面やメールなどの形に残る方法で行うようにしてください。
なぜなら、注意指導の記録を形に残していなかった場合、仮に注意指導したものの是正が見られず解雇を行った際に、解雇の有効性を争う従業員側が「注意指導はなかった」という主張をされてしまうおそれがあるからです。
改善がなければ懲戒処分や退職勧奨を検討する
注意指導を重ねたものの、従業員に改善が見られない場合は、いきなり解雇をするのではなく、けん責や戒告といった段階的な懲戒処分を行ったり、退職勧奨を行ったりすることをおすすめします。
いきなり一番重い処分である解雇を突きつけた場合には、従業員側からの裁判等の紛争のリスクが高まる可能性があります。そのようなリスクを少しでも回避するために、段階的な処分を進めていくことが適切です。
欠勤が多い社員への対応で不安なことがあれば弁護士にご相談ください
これまでに解説したとおり、欠勤が多い社員に対して、会社側が対応を誤ってしまうと無効な解雇であるとして未払い賃金の支払い請求がなされてしまうリスクがあります。
「この場合に解雇は有効に認められるか」「解雇に関する就業規則の規定は問題ないか」など、対応に少しでも不安なことがあれば、弁護士法人ALGへご相談ください。
具体的な状況に応じた適切な解決策をご提案することができます。

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保有資格医学博士・弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53982)
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