
監修弁護士 大木 昌志弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士
交通事故の示談においては様々な点が問題になります。ドライブレコーダー等、客観的証拠がない場合には、事故態様や過失割合が問題となります。また相手方が無保険で支払いに応じてくれないことも考えられます。
交通事故の示談にあたって、直接相手方と交渉しようとすると、相手方が加害者であることを認めない、支払える金銭はないと主張し、もめることは容易に想像できます。このように、相手方が被害者の正当な訴えを聞き入れないということは多々あるのです。
目次
交通事故の示談でもめる原因
先ほど述べたように、交通事故の示談では、もめる原因が多く存在します。以下では、もめる原因について、よくある原因を6個取り上げ、詳しく紹介します。
加害者の態度が悪い
1つ目の原因は、加害者の態度が悪いということです。
加害者によっては、自身が加害者であることを認めず、被害者に対して謝罪をしないことがあります。被害者側から謝罪を求めても、謝罪をするどころか、逆に自分の方が被害者であるとして謝罪や損害賠償を求めてくるという場合もあります。
また、加害者が被害者に対して、威圧的な態度を取り、被害者の訴えを抑圧してくることもあります。加害者のこうした態度により示談が進まないことが考えられます。
加害者が無保険
2つ目の原因は、加害者が無保険であるということです。
加害者が無保険である場合、被害者は加害者に対して損害賠償請求をすることになりますが、加害者自身が損害賠償金を支払わなければならないことから、話し合いに応じてくれないことがあります。
また、話し合いに応じたとしても、加害者自身に貯蓄がない場合には、任意に支払ってくれないということもあります。こうした加害者の事情により、示談が進まないことが考えられます。
過失割合でもめている
3つ目の原因は、過失割合の主張が合わないということです。
ドライブレコーダー等の客観的証拠がない場合、事故態様が不明確であるが故に、互いの主張がかみ合わず、過失割合でもめることがあります。
特に駐車場内の事故については、公道ではないため道路交通法で規定されているような明確な交通ルールが適用又は応用できない場合がありますし、先例として参考になる裁判例などが十分ではないこともあり、過失割合が大きく対立することが多いです。
後から症状が出てきた
4つ目の原因は、後から症状が出てきたということです。
特にむち打ちの場合には、交通事故発生から数日や数週間くらい経過してから、それまで発症していなかった痛みや吐き気などに気がつくことも少なくありません。このような症状は目に見える怪我ではないため、自分でもなかなか気がつかないこともあると思いますが、事故発生から時間が経っていればいるほど、事故とは因果関係がない等として争われることが多いです。
また、完治したと思って示談したものの、その後に症状が再発症し、それが後遺症であることが発覚するケースもあります。示談後に後遺障害について賠償請求しようとしても、加害者側は応じないことが多いでしょう。
治療費を打ち切ると言われた
5つ目の原因は、治療中に治療費を打ち切ると言われることです。
被害者がまだ治療を続けたいのに、保険会社が治療費を打ち切ると言ってくることがあります。各保険会社の運用や交通事故に起因する怪我の程度によってその期間は異なりますが、必要以上の治療費は負担しないとの考えから、こうした連絡が来ることがあります。被害者としては、まだ治療が必要なわけですから、その治療費を誰が負担するのかでもめてしまうことがあります。
提示された示談金に合意できない
6つ目の原因は、提示された示談金の額に納得がいかず、合意できないということです。
相手方から提示された金額が、自身の交通事故による被害に対し、あまりにも低額であった場合、被害者は、当然納得いかない旨を相手方に主張すると思いますが、その主張を聞き入れてもらえないことも多々あります。こうした場合には、示談交渉が頓挫してしまい、もめる可能性があります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の示談交渉でもめてしまった場合、どうしたら良い?
以上のような原因により、交通事故の示談交渉でもめてしまった場合、そのまま放置してしまうと、時効が完成し、損害賠償請求できなくなるおそれがあります。
交通事故による損害賠償請求権の時効は、物損に対する損害賠償請求権につき事故発生日(正確には「損害及び加害者を知ったとき」)より3年、人身に対する損害賠償請求権につき事故発生日(正確には「損害及び加害者を知ったとき」)より5年です。時効で権利が消滅してしまう前に、以下のような、しかるべき方法を取るべきだと言えます。
ADRなどの機関を利用する
まず、ADR(交通事故紛争処理センター等)などの機関に対して申し立てを行うことが考えられます。
たとえば交通事故紛争処理センターでは、あっせん委員(弁護士が担当)が双方の主張を聴取し、適切なあっせん案を作成の上、双方に提示することになります。その内容に双方が同意した場合には、示談が成立します。
第三者を間に挟むことで当事者が冷静になり、解決できることもあるため、ADRは有効な方法の1つです。また、年単位で時間がかかるということも少なく、ある程度迅速な解決が図られます。
弁護士に相談する
最も良い方法は、弁護士に依頼することです。
ADRなどの第三者機関は、あくまでも第三者であり、中立的な立場であるため、被害者の利益を最大限に保護するような示談案を作成してくれるわけではありません。その点、弁護士に依頼した場合、依頼を受けた弁護士は被害者の方の最大利益を実現することが仕事なわけですから、できる限り被害者に有利な条件で示談することを考えて行動します。
また、弁護士費用特約に加入していれば、多くのケースで弁護士費用を負担する必要はありません。
こうしたことからすれば、交通事故の示談でもめた場合には、弁護士に依頼することが最良の方法であると言えます。
弁護士費用特約とは | 適用範囲や使えないケース示談でもめてしまったら早めに弁護士にご相談下さい
交通事故の示談でもめてしまった場合には、時効の問題もありますので、早めに弁護士に依頼することがご自身の利益を守ることにつながります。弁護士費用特約に加入していれば、多くの場合、弁護士費用もかかりませんし、弁護士に依頼すれば、本来ご自身で行わなければならない相手方や保険会社との煩雑なやりとりも一切不要になります。
被害者の方の利益を最大限に実現すべく行動できるのは弁護士しかいません。交通事故の示談でもめてしまったら、まずは早めに弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53980)