
監修弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士
「優しかったのに、最近暴力を振るうようになった」「DVをする配偶者と離婚したいけど、話をするのが怖い」
配偶者からDVの被害に遭われている方が離婚したいと思うのは当然のお気持ちでしょう。どんな理由であれ、DVは許される行為ではありません。
この記事では、DV加害者である配偶者と離婚するために知っておくべきことについて解説していきます。配偶者からDVを受けているという方、離婚をお考えの方、ぜひ最後までご覧ください。
目次
DV加害者と離婚する方法
DV加害者と離婚するためには、以下のような方法があります。
- まずは身を守るために別居する
- DVの証拠を集める
- 離婚の手続きを進める
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
まずは身を守るために別居する
自分自身や子供の身を守るために、まずは別居をしましょう。同居中にDV加害者である配偶者に離婚を切り出すと、相手は逆上してさらに暴力を振るう危険性があります。そのため、別居は相手に離婚を切り出す前に進めるようにしましょう。
【別居の方法】
- 新たに家を借りて生活を立て直す
- 実家、親戚、友人の家に身を寄せる
- 警察や配偶者暴力相談支援センターに相談し、一時的にシェルターを紹介してもらう
接近禁止命令の発令を検討する
接近禁止命令とは、DV防止法第10条で定められている保護命令のひとつで、命令に違反した加害者には刑罰が科せられます。
接近禁止命令により、裁判所が禁止できる行為は次のとおりです。
- 被害者の身辺へのつきまとい
- 被害者の住宅、勤務先、常在している周辺へのうろつき
〈接近禁止命令の注意点〉
- 裁判所への申立てが必要
裁判所が接近禁止命令の発令要件を満たしていると判断したときに発令するものであるため、暴力等が行われ、生命・身体に重大な危険が及ぶおそれがあることを客観的に証明する証拠が必要です。
- 本人のみ有効
接近禁止命令は申立人である本人についてのみ有効であるため、子供への接近や実家への訪問などは禁止できません。また、申立人であっても電話やメールでの接触は禁止されていません。
DVシェルターは一時的にしか使えない
DVの被害者が一時的に避難できるDVシェルターもあります。しかし、DVシェルターは生命・身体への危険(緊急性)が認められる場合でないと利用できません。
また、DVシェルターはあくまでも一時的な避難施設です。
緊急避難先としては有効ですが、「DV加害者との離婚」という根本的な問題の解決を目指すためには、別居状態の継続が必要です。そのため、シェルターの利用をお考えの方は、出た後の住居探しも考える必要があります。
DVの証拠を集める
DV加害者との離婚は話し合いで成立することが難しく、調停や裁判に移行することが考えられます。そのため、DVの証拠を集めておくことが大切です。
また、証拠集めは別居してからだと困難になりますので、別居するまでの間に身の安全を確保しつつ、集めるようにしましょう。
具体的にどのようなものが証拠となるのか、以下で確認していきましょう。
診断書
医師による診断書や医療機関への通院記録は、DVの有力な証拠となります。
身体への怪我だけでなく、暴力や暴言などが原因で過呼吸になったり、うつ病、PTSDなどが疑われる場合も同じく医師から診断書を発行してもらいましょう。
診断書には、以下のようなことを記載してもらうようにしましょう。
- 受診日
- 傷病名
- 怪我を負った経緯
- 怪我の症状や程度
- 要治療期間
また、診断書を取得する際は、医師にDVを受けたことをきちんと伝えることが大切です。DVの話はしたくないと思うかもしれませんが、DVが原因で怪我を負ったことが診断書に記載されれば、より有効な証拠となります。
怪我の写真
DVを受けて負った怪我の写真も有効な証拠となります。どんなに小さな怪我であっても、DVが原因の場合はすべての写真を撮っておきましょう。
その際、自分自身の怪我であることを証明するために、顔と怪我を一緒に写しておくと証拠としての信用性が高まります。
また、怪我の写真だけでなく、加害者が壊した物や暴れた後の部屋の様子なども撮っておきましょう。
なお、写真を撮る際は加工を疑われないよう使い捨てカメラを使用すること、日付を入れることが大切です。
音声・動画
DVを受けているときの音声や動画は有効な証拠となります。より有効性を高めるために、被害者と加害者の両者がはっきりとわかる動画や、名前を呼ぶ声が入った音声などを記録しておくと良いでしょう。
しかし、DVは急に行われるため、とっさに音声や動画を撮ることは極めて困難です。録音や録画がDV加害者にバレてしまった場合、DV加害者が逆上してしまう可能性もあるので、焦らず対応しましょう。
そのため、あらかじめボイスレコーダーを起動させておいたり、相手に気付かれないように動画を回しておいたりすることが大切です。
DVを受けたことが記載してある日記
日々のDVについて記録した日記も証拠となり得るでしょう。特に、以下の点を具体的に書いておくと有効です。
- DVを受けた日時や場所
- DVの内容
- 怪我の症状
また、日記はスマートフォンのアプリでも書くことができますが、改ざんが疑われることもありますので、消えないボールペンで手書きするのが望ましいでしょう。
日記の内容は具体的かつ詳細な記載であり、継続的に記載されていると信用性が高くなります。
警察や配偶者暴力相談支援センター等への相談記録
DVを受けていることを警察や公的な相談機関に相談していた場合、その事実も有効な証拠です。
相談先から相談カードや相談記録といった書面を出してもらうことで、相談の日時や相談の内容などを証明することが可能となります。
経済的DVを受けている場合
経済的DVとは、相手の金銭的な自由を奪い、経済的・精神的に追い詰める行為のことです。具体的には、以下のような例が該当します。
- 収入があるのに、相手に生活費を全く、または、ほとんど渡さない
- 相手に専業主婦(夫)であることを強要し、外で働かせない
- 特段の理由なく一切働かない
- ギャンブルや趣味など浪費のために借金を繰り返す
- 相手に対し、お金の使い道を必要以上にチェックし、自由に使わせることを認めない
また、経済的DVの証拠となるものとして、以下のようなものが挙げられます。
- 生活費が振り込まれていないことが分かる銀行の通帳
- 加害者の浪費が分かるクレジットカードの利用明細
- 加害者の借金の契約書や督促状
- 「生活費を支払うつもりはない」など、お金に関する加害者の暴言が録音された音声
離婚の手続きを進める
一般的に、離婚の手続きは以下のように行われます。
- 夫婦で話し合い(協議)
- 話がまとまらない場合は調停を申し立てる
- 調停で合意できない場合は裁判を提起する
しかし、DVを理由とする離婚の場合、DV加害者と話し合うこと自体が難しく、相手が離婚に応じないケースも多いため、調停、裁判に進む可能性が高いといえます。
相手が離婚してくれない場合
相手が離婚してくれない場合は、調停を申し立てることになります。調停は調停委員を間に挟んだ話し合いにより、問題の解決を図る手続きです。
調停を有利に進めるためには、調停委員からの質問に備えたり、証拠を十分に準備し、DVの被害を訴えたりしなければなりません。
そのため、ご自身だけで調停を進めるのは難しいでしょう。調停を有利に進めたい、有利な条件で離婚したいとお考えの場合には弁護士に依頼し、弁護士を代理人として調停に同席してもらうことをおすすめします。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVで離婚するときは慰謝料請求ができる
DVを理由として離婚する場合、証拠があれば相手に慰謝料を請求できる可能性があります。DV離婚の慰謝料相場は数十万~300万円程度でしょう。ただし、具体的な金額は以下のような点を考慮し、総合的に判断されます。
- DVの回数・頻度・期間
- DVによる怪我の症状や程度
- 夫婦の婚姻期間の長さ
- 養育が必要な子供の有無・人数
- DVによりうつ病、パニック障害など精神疾患を患った など
親権をDV加害者にとられる可能性はある?
子供の親権者を決めるにあたって大事なことは「これまで主たる監護者はどちらであったか」ということです。例えば、DV被害者が子供を自宅に置いて別居すればDV加害者に監護実績ができてしまい、被害者が親権をとることは難しくなってしまう場合もあります。
しかし、DVが子供の前で行われていたり、被害が子供にも及んでいる場合、DV加害者が親権者となると子供の身体・精神に危険が及ぶおそれがあるため、DV加害者に親権が渡る可能性は低いでしょう。
DVで離婚した場合でも面会交流はしなければいけない?
面会交流は、定期的に非親権者と子供が交流を持つことで、子供の健やかな成長を促進させる大切な機会です。非親権者の権利でもありますが、子供の権利でもあります。
そのため、面会交流を行うことが子供に悪影響とならない限り、DV加害者であっても面会交流が認められています。
しかし、面会交流をすることで子供がDVの被害に遭う可能性がある場合や、DVのトラウマで子供が面会交流を拒絶しているような場合には、子供の福祉を優先的に考え、面会交流を拒否することができます。
DV加害者と離婚したい場合は弁護士にご相談ください
DV加害者は自分がDVをしているという意識が低い場合もあり、話し合いが進まないことも多くあります。また、離婚話に逆上してDVの被害が拡大するおそれもあり、ご自身だけで戦うことは精神的負担も大きくなってしまうでしょう。
加害者がDV行為をする理由がどのようなものであれ、許されるものではありません。おひとりで悩まず、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは離婚問題に詳しい弁護士が多数在籍しております。DVの証拠集めや加害者との交渉、調停や裁判の手続きなど幅広くサポートしていくことが可能です。
弁護士はあなたの味方となり、新たな人生をスタートできるよう尽力いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
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保有資格弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53982)