- 相続財産:
- 債務(未払賃料)
- 依頼者の被相続人との関係:
- 子
- 相続人:
- 被相続人の子(依頼者とは異母きょうだい)
- 争点:
- 相続放棄
弁護士法人ALGに依頼した結果 |
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相続放棄の申述が受理され、訴訟が取り下げられる。 |
被相続人は10年以上前に死亡したところ、その当時、他の相続人との協議の上、依頼者は相続放棄をするということで話がまとまりました。もっとも、依頼者は、相続放棄の手続を他の相続人に任せてしまい、相続放棄の手続は完了しているものとばかり思っていました。
それから10年以上が経ち、ある日、依頼者のもとに、被相続人が生前に借りていた土地の賃貸人(相続債権者)から、未払賃料の請求書が届きました。依頼者は、すでに相続放棄の手続は完了しているものと思っていたため、賃貸人(相続債権者)に対してもその旨を説明しました。その後、賃貸人(相続債権者)は、調査したところ依頼者は相続放棄をしていないことが判明した旨、依頼者に伝えましたが、依頼者は、そんなはずはないと思い、それ以上は取り合いませんでした。
そうしたところ、それから半年ほど経ってから、賃貸人(相続債権者)は、依頼者に対する未払賃料請求の訴訟を提起しました。訴状を受け取った依頼者は、慌てて弊所に相談されました。
弁護方針・弁護士対応
法律上、相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならないこととされています。また、裁判例によれば、被相続人に多額の債務がないと信じたために3か月以内に申述ができなかった場合には、その多額の債務の存在を認識したときから3か月以内に申述しなければならないとしたものがあります。
本件では、依頼者は、賃貸人(相続債権者)から相続債務の存在や金額を通知され、相続債務の存在を知ったにもかかわらず、それから3か月以内に相続放棄の申述をしませんでした。そのため、今から相続債務の申述をしても、すでに期限が経過しているため、受理されないおそれがあります。そうすると、依頼者は賃貸人(相続債権者)からの請求を免れることができず、未払賃料を支払い、かつ、今後の賃料も支払い続ける必要が生じることになります(なお、債権者は土地の賃貸人)。
また、本件では、他の相続人(被相続人の妻)が被相続人の死後数年間にわたり賃料を支払い続けていたという事情があることから、消滅時効の主張をすることも難しい状況でした。
そこで担当弁護士は、次の2点を主張することで何とか相続放棄の申述が受理されないか、試みることにしました。
①一つは、依頼者が、被相続人の死後当時、相続放棄の手続が完了したと信じたことについて、具体的な経緯を主張しました。このような主張をすることにより、賃貸人(相続債権者)から請求書が届いた時点で、自らが相続放棄を済ませているため支払義務がない(かつ改めて相続放棄の申述をする必要がない)と思ったことに過失がないことを強調しました。
②もう一つ、担当弁護士は、当初、賃貸人(相続債権者)から届いた書面に着目しました。その書面を見ると、確かに、未払賃料があることやその金額、相続人である依頼者に支払義務があることなどが記載されていましたが、請求のもととなった賃貸借契約書の写しなどは添付されていませんでした。そして、賃貸人(相続債権者)が提起した訴訟においては、賃貸借契約書の写しが証拠として添付されていました。そこで、担当弁護士は、「賃貸人(相続債権者)から請求書を受け取った時点では賃貸借契約の有無やその具体的内容が不明であったが、訴状や証拠を受け取った時点で初めてそれらを知るに至った」と構成し、その時点からはまだ3か月が経過していないことを理由に、相続放棄の申述は受理されるべきであると主張しました。
千葉法律事務所・相続案件担当弁護士の活動及び解決結果
その結果、相続放棄の申述は無事に受理されました。その後、担当弁護士は、相続放棄申述受理証明書を訴訟において証拠提出したところ、原告(賃貸人(相続債権者))は依頼者に対する請求を諦め、訴訟を取り下げました。