
監修弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士
DVが深刻な社会問題となる中、DVの被害者を装って、離婚において有利な条件を獲得しようとする人も増えております。相手方が、このような「でっちあげDV」「虚偽DV」をしてきた場合、しっかりと毅然とした態度で、防衛のための措置をとる必要があります。
措置を誤ってしまうと、DVを理由とする慰謝料の請求が認められる等、大きな損害が生じる可能性が否定できません。そのようなことにならないよう、対抗措置のポイントを、弁護士がわかりやすく解説いたします。
DVをでっち上げられた場合でも離婚は成立してしまうのか?
大きく言って、離婚が成立するのは、①②の二つの場合です。
- 当事者間で離婚の合意が成立する。
- 裁判官が、離婚請求を認める判決を下す。
まず①は、当事者が話し合いにより解決を目指すという手続です。逆に言えば、話し合いがまとまらない限り、離婚は成立しません。
DVの事実の存否について争いがある場合には、話し合いがまとまらないと考えられますので、基本的に①の手続により、離婚が成立することはありません。
一方で②は離婚訴訟手続であり、当事者の話合いによらず、裁判官が双方の主張、証拠に基づき判断をします。相手方が、DVの事実を裏付ける証拠を提出した場合等には、裁判官が、その証拠に基づき、DVの事実を認める可能性があります。
虚偽DVのよくあるパターン
まずは、まったくゼロから虚偽のDVをでっちあげるというケースがあります。たとえば、相手方が、全く異なる原因により怪我を負ったにもかかわらず、その怪我を利用してDVをでっちあげる等の場合です。
また、全くゼロからでないにしても、文脈を意図的に捻じ曲げることによって、あたかもDVの事実があるように見せかけるというケースもあります。
たとえば、本当は「双方が言い合いの喧嘩をしていた」という状態であったにもかかわらず、編集によって前後の会話を削除し、こちら側の暴言の一部のみを切り抜くことで、「加害者と被害者」の図式を作るというような場合です。
DVをでっち上げられたときの対処法
DVをでっち上げる理由を把握する
相手がDVをでっちあげて離婚をしたいと考えている場合、そうまでしてでも離婚をしたいという切迫した事情があると考えられます。たとえば、相手に好きな人がいて、その人と一緒になるために離婚を急いでいるというような事情があるかもしれません。
もしそのような可能性があるのでしたら、こちらも積極的に、相手の不貞関係を基礎づけるような証拠を集める方がよいでしょう。相手の不貞行為の証拠が入手できれば、相手に対して慰謝料請求ができるほか、相手の離婚請求を原則として拒むことができるようになるため、より有利に立ち回れると考えられます。
DVが虚偽であることを主張する
相手がDVをでっちあげてきた場合、まずは冷静に相手の主張を分析し、矛盾点に反論していきましょう。うっかり相手の主張を認めてしまった場合、そのせいで、後々交渉で不利になってしまう可能性があるので、注意が必要です。
また、相手の主張が矛盾していたり、客観的な事実と異なったりしているといえるような証拠集めも大事です。
離婚不受理届を出す
離婚届の偽造は犯罪行為ですが、相手方がDVをでっちあげなければならないほど切迫している場合、偽造した離婚届を役所に提出するという暴挙に出る可能性も否定できません。念のため、離婚不受理届を出しておくことをお勧めいたします。
不受理届さえ出しておけば、原則として、こちらが不受理届を取り下げない限り、離婚届が受理されることはなくなりますので、相手の勝手な行動に振り回されなくて済むと考えられます。
弁護士に相談する
相手の主張にどのような誤りがあるのか、矛盾があるのかという点は、冷静に主張を分析しないとなかなか気づかないものです。またその指摘を本人がした場合、相手の感情を余計にあおることになるおそれがあります。
このようなことを考えると、相手のでっちあげDVにしっかり対応するためには、第三者である弁護士に対応を任せるのが良いと思います。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVの冤罪は名誉毀損で訴えることができるのか?
名誉棄損が認められるためには、
- 公然と
- 事実を摘示し
- 人の名誉を棄損した
ことが認められる必要があります。
①「公然と」といえるためには、不特定又は多数人へ伝わるような方法で情報が伝えられている必要があります。そのため、当事者間でやり取りをしている限りにおいては、不特定又は多数人へ伝わるおそれがないため、この要件を満たしません。
逆に、SNSで公言していたり、職場で噂を流したりしている場合には、この要件を満たしていると考えられます。
次に②について、最低限、具体的な事実を示している必要があります。そのため、単に抽象的な評価に過ぎないもの(「相手は馬鹿だ」「荒っぽい人だ」)などは、具体的な事実の摘示がないため、この要件を満たしません。
最後に③について、ただ単に相手が「傷ついた」と言っているだけでは、この要件は認められず、客観的にみて社会的な評価を低下させたといえるかがポイントになってきます。
仮に、DVの具体的な事実を伝えていた場合には、通常、客観的にみて社会的な評価を低下させたといえると考えられますので、この要件を満たすことになります。
DVをでっち上げられた場合、相手に慰謝料請求できるか?
DVをでっちあげた相手に対して、侮辱行為や名誉棄損行為を理由に慰謝料請求できる場合があります。慰謝料額は、最終的に裁判官が個々の事情を加味して決定するものであるため、明確な相場というものはありません。
ただ目安としては、名誉棄損を理由とする慰謝料の場合、10万円~100万円程度の幅で決定されることが多いと考えられます。単なる侮辱にとどまる場合は、より金額が低くなります。
DVをでっち上げられてお困りの場合は弁護士に相談してみましょう
DVをでっちあげてくるような相手と、まともに交渉していくのは難しいと考えられますし、何より交渉のストレスはとても大きいと思われます。餅は餅屋、というわけではありませんが、DVや離婚問題にお困りの方は、まずは経験豊富な弁護士にお気軽にご相談ください。
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保有資格弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53982)