説明義務違反

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

  • 説明義務

説明義務とは何か

医療過誤事件においては、医師の責任の根拠の一つとして、医師の説明義務違反を主張する場合があります。説明義務には、患者の同意を得るための説明義務と、療養方法の指導としての説明義務があるとされています※1。そして、説明義務に違反すると患者の自己決定権を侵害するものと、患者の生命身体の侵害につながるものがあります。

※1 秋吉仁美: 医療訴訟. 青林書院. p335, 2009.

どのような場面で問題となるか

医師が患者にすべき説明を怠ったか否かについては、高い合併症の危険性が見込まれる場合の方針、治療方法の選択、患者の病状について、転医について、医療行為を実施した結果の説明など、様々な場面で問題となりえます。実際の医療事件では、説明義務違反単独で主張することよりも、他の診療行為上の注意義務違反と同時に主張することが多いように思われます。

説明義務の対象となる事項や説明の程度について

どのような事項について説明義務の対象となり、どの程度の説明の義務があるのかについては、具体的な事実関係によるため一般的に具体的な基準を設けることは容易ではありません。しかしながら、これに関するいくつかの裁判例等がありますので紹介します。

まず、手術前の説明について、「医師は、患者の疾患の治療のために手術を実施するにあたっては、診療契約に基づき、特別の事情がない限り、患者に対し、疾患の診断(病名と病状)、実施予定の手術の内容、手術に付随する危険性、他に選択可能な治療方法があれば、その内容と利害得失、予後などについて説明すべき義務がある」と判示しています(最判平成13年11月27日)。

また、説明の程度について、「患者の現症状とその原因、その治療行為を採用する理由、治療行為の内容、それによる危険性の程度、それを行った場合の改善の見込み、程度、当該治療行為をしない場合の予後などについて、できるだけ具体的に説明すべき義務がある」(東京地判平成4年8月31日)としたものがあります。さらに、あらゆる治療方法についても説明しなければならないかというと、当該事件当時に医療水準として確立していない治療方法については、説明義務を否定した最高裁(最判昭和61年5月30日)があります。もっとも、未確立の療法であっても、「当該療法が少なからぬ医療機関において実施されており、相当数の実施例があり、これを実施した医師の間で積極的評価もされているものについては」一定の要件のもとで医師の知る範囲で説明すべき義務を肯定した判決(最判平成13年11月27日)もあります。

最後に

医師からの説明が不十分であったことは、患者側からの医療過誤に関する紛争の発端の一つになっていると考えられます。実際には、説明義務違反で生命身体に発生した侵害結果に対する医師の責任が認められるためには、当該説明がなされていれば、侵害結果が回避できたかという視点が必要なため、説明義務を主張したとしても、全てが認められるわけではありません。しかし、患者側からは、医療機関に対する診療行為への疑問の発端にもなりえ、実際にも医師の責任の根拠の一つとして多く主張されている考えられます。実際に、個々の事案について、説明義務の主張が成り立つ見込みがあるか否かについては、弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事の執筆弁護士

弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所所長 医学博士 弁護士 金﨑 美代子
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東京弁護士会所属
弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 医学博士 弁護士 金﨑 浩之
監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)
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