医療訴訟の統計
監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
- 統計
医療訴訟を提起することになる場合、あるいは裁判の手続きを踏まずとも、医療機関に対し、医療過誤を原因に損害賠償請求をする場合には、医療訴訟の判決ではどの程度患者側が勝訴しているのか、裁判にはどの程度の期間を要するのか気になるところだと思います。この点、医療訴訟の平均審理期間や認容率等の現状については、裁判所のホームページにて確認することができます。
平均審理期間
令和2年において、新受、つまり当該年に新しく受け付けた事件の数は834件、平均審理期間は26.1か月となっています。平均審理期間が2年を超えているように、一旦裁判を提起すると長期にわたって裁判と向き合う必要があることが分かります。過去に遡り、平成11年から平成14年の平均審理期間を見てみると、平均審理期間が30.9か月から35.6か月ですので、その頃に比べれば審理期間の短縮が図られているのですが、やはり、原告・被告双方の主張のもとに事実関係を確定させたうえで、医療水準に従った医療がなされているかを審理すると、大抵の事件において短期での解決は中々難しいものであるといえるでしょう。
終局の仕方
裁判を提起した後、当該事件がどのように終わるか、つまり裁判上の和解で終わるのか、判決で終わるのかについてみてみます。訴えの取り下げなど、その他の事情で裁判が終わる場合もあるのですが、それらを除くと、令和2年における判決の割合は30.5%、和解は53.3%となっています。判決となる前に、和解で終結となる事件が多くなっています。
認容率
医事関係事件の認容率、つまり原告側の訴えが認められる割合は、令和2年において22.2%となっています。通常訴訟(医事関係事件を含む)の認容率は、同年において86.7%と比較すると、認容率はかなり低いといえます。
もっとも、既述のように、和解で終結している事件も多く、その場合は一定程度の解決金が支払われるのが通常です。上記の22.2%は、和解とならずに判決となった場合の事件の割合ということを考える必要があります。したがって、認容率の低さを理由として、医療調査を経たうえで医療過誤が疑われる事件についての提訴を躊躇する必要はないと考えます。
この記事の執筆弁護士
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東京弁護士会所属
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保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)東京弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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