脳卒中(脳血管障害)
監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
- 脳卒中
脳卒中に関連する事案の問題
脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血などの脳卒中の診療に関する医療過誤についてのご相談は、数多くあります。脳卒中は、血管の閉塞、破綻などにより、突然神経症状が発現した状態の総称で、脳血管の狭窄や閉塞などによる脳梗塞などの虚血性疾患と、脳血管の破綻による脳内出血、くも膜下出血などの出血性疾患があります(病気が見える. 脳・神経Vol.7第2版 p69. MEDIC MEDA)。
医療過誤関連のご相談の中には、他の手術で脳卒中を発症したという事案もありますが、頭痛、悪心、めまい、意識障害など、何らかの症状があって病院を受診したのに、帰宅させられてしまった、あるいはすぐに診断・治療とならず経過観察されて、その後、脳卒中であることが判明したというご相談が多いように思います。このような脳血管障害の事案は、死亡したり、重い後遺症が残ったりすることが多いため、そのような結果が避けられなかったのかが多くの場合の疑問点となります。このような事件も、他の事件と同様に、当該問題となる診療行為に過失があるのか、つまり、医療水準にしたがった診療行為がなされていたのか否か、また診療行為上の過失がなければ当該重大な結果が避けられたのかということを検討します。
後遺症
高次脳機能障害とは、脳血管障害や変性疾患、頭部外傷などにより、失語、失行、失認、記憶障害、注意障害をきたしている状態をいいます(病気が見える. 脳・神経Vol.7第2版. p157. MEDIC MEDA)。脳卒中・脳血管障害の事案の後遺症として多いのが、高次脳機能障害や、麻痺です。
脳卒中では、早期の治療が予後の改善のために必要であるため、然るべき時期に診断して適切な治療がなされているかが問題となります。
診断・治療について
脳卒中の事案では、頭部CTやMRIなどの画像診断が重要になります。
とくに、脳梗塞では、CTでは初期には異常がみられないか、一部の症例でearly CT signがみられるのみであるところ、MRI(とくに拡散強調像は超急性期の脳梗塞の検出に優れている)では初期から梗塞巣がみられるとされています(病気が見える. 脳・神経Vol.7第2版. p86. MEDIC MEDA)。後方視的に脳梗塞を発症していた事案において、発症初期においてCTが撮影されていても異常がみられていなかったケースについては、MRIまで撮影して発見すべきであったかが問題となることがあります。脳梗塞と診断した場合、超急性期(8時間以内)には、血管の閉塞を解除する再開通療法により、神経学的予後を大きく改善できるとされ、4.5時間以内であれば最も有効性のエビデンスが確立されている治療法であるrt-PA静注療法の適応を検討するとされています(病気が見える「脳・神経」Vol.7 p89 発行MEDIC MEDA)。このように、早期の治療ができたか否かで予後が変化する可能性があるため、仮に医療水準にしたがった診療がなされた場合であれば、どの時点で診断ができたといえるのか、またその時点において診断及び治療ができたならば予後が改善されたかについて問題となるのです。
この記事の執筆弁護士
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東京弁護士会所属
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保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)東京弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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