監修弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士
- 労働基準法
「振替休日」と「代休」は、休日という意味では一見同じもののように思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、両者にはそれぞれ異なる特徴があります。
今回は、振替休日と代休の性質や、これに関連する割増賃金について解説していきます。
目次
振替休日と代休の違いとは?
そもそも、「振替休日」と「代休」にはどのような違いがあるのでしょうか。
休みを決めるタイミングに違いがある
「振替休日」は、もともと休日と定めていた日に労働を行い、その一方で前もって別の労働日を休日に変更する場合のことを指します。
「代休」は、休日に労働を行い、その後に当該休日労働の代わりに特定の労働日を休日とするものです。
労働日から休日に変更するタイミングが、「振替休日」の場合は前もって行い、「代休」の場合は事後的に行うという点で違いがあります。
割増賃金に違いがある
「振替休日」の場合は、もともと休日と定めていた日に労働した日は「休日における勤務(法定休日労働)」としては扱われません。
そのため、「振替休日」を実施した場合には、労働基準法に基づく割増賃金は発生しません。
他方で、「代休」は、休日労働を行ってから事後的に休日を設定するため、当該休日労働は文字通り「休日における勤務(法定休日労働)」として扱われます。
そのため、「代休」の場合には、原則として、労働基準法に基づく割増賃金が発生します。
上記のとおり、「振替休日」と「代休」に、割増賃金が発生するか否かという点で大きな違いがあります。
振替休日の賃金計算例
「振替休日」の場合には、原則として法定休日労働に関する割増賃金は発生しません。
ただし、時間外労働を行った場合には、時間外手当・残業手当として25%の割増賃金が発生します。
この25%の割増賃金については、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働を行った場合に発生します。
以上を前提に、例として、1時間あたり賃金が2000円で、法定労働時間を超えている状態で、本来の休日が日曜日に8時間出勤して「振替休日」を取得した場合に、賃金は下記のような計算となります。
- 日曜出勤分の賃金
→「2000円×1.25×8時間=2万円」 - 通常勤務の場合の賃金
→「2000円×1.0×8時間=1万6000円」
上記のケースでは、時間外手当として通常勤務の賃金と比べて「4000円(2万円-1万6000円)」多く支払う必要があります。
代休の賃金計算例
上述のとおり、「代休」の場合には、休日労働は法定休日労働として扱われるため、35%の割増賃金が発生します。
例えば、1時間あたりの賃金が2000円で、事前の振替がない状態(「代休」状態)で休日の日曜日に8時間勤務した場合に、賃金は下記のような計算となります。
- 日曜出勤分の賃金
→「2000円×1.35×8時間=2万1600円」 - 通常勤務の場合の賃金
→「2000円×1.0×8時間=1万6000円」
上記のケースでは、割増賃金分として「5600円(2万1600円-1万6000円)」を多く支払う必要があります。
振替休日や代休の取得に期限はある?
法律上、「振替休日」や「代休」の取得に期限はありません。
そのため、「振替休日」や「代休」に関しては就業規則などで社内ルールを明確化しておく必要があります。
明確なルールがない場合には、「未払賃金の発生」や「長時間労働」による勤怠管理が困難となってしまうなどのリスクがあります。
例えば、「振替休日については、同一週内に定めること」「代休は●か月以内」などのように具体的な期限を設けることをおすすめします。
振替休日・代休を取得させる際の6つの注意点
不測のトラブルを生じさせないようにするために、以下の6点に注意してください。
あらかじめ就業規則に定めておく
「振替休日」や「代休」については、法律上取得期限の定めはありません。
そのため、取得方法や期限を就業規則で明確化し、労働者側と会社側で認識を統一しておくことをおすすめします。
日頃から勤怠管理を徹底する
労働者が取得したものが「振替休日」か「代休」かによって割増賃金の発生の有無や金額も大きく変わっていきます。
思わぬ形で未払賃金が発生しトラブルとなってしまうことを未然に防ぐために、日頃から勤怠管理を徹底しておきましょう。
なるべく同一賃金支払期間内に取得させる
休日出勤分の代わりとなる休日を設ける時期を後ろ倒しにしてしまうと、賃金の計算が複雑となってしまい予期せぬ形で労働基準法違反となる可能性があります。
例えば、休日出勤した翌月に「代休」を取得する場合、休日に出勤した分の割増賃金(135%)は当該出勤月に支給することになりますが、その翌月においては代休取得分の賃金(100%)を控除するという2段階の処理が必要となり、複雑となってしまいます。
他方で、休日出勤と代休とした日が同一月内(同じ締め日)である場合には、割増分の35%のみ当該月の賃金に上乗せをするという簡便な処理ができます。
そのため、できるだけ同一賃金支払期間内(同じ締め日までに)「振替休日」や「代休」を取得することをおすすめします。
年次有給休暇への変更は不可としておく
「代休の代わりに、有給休暇を消化したことにして割増賃金を支払わない」という処理は原則として認められません。
なぜなら、有給休暇は、労働者が希望する時季に取得させるものであるため(労働基準法39条5項)、会社側が有給休暇の取扱いを勝手に決めることはできません。
そのため、就業規則上も「年次有給休暇への変更は不可としておく」必要があります。
事後の振替は代休扱いとなる
振替先の休日を前日までに伝えておらず事後的に設定することになってしまった場合、法律上は「振替休日」ではなく「代休」として扱われることになります。
上述のとおり「代休」の場合には、割増賃金の支払い義務が発生してしまいます。
振替休日が週や月をまたぐ場合は割増賃金に注意
「振替休日」が週や月をまたぐ場合も注意が必要です。
例えば、月末の休日に出勤をし、翌月頭の平日を「振替休日」とした場合、出勤した週の労働時間が法定労働時間を超えていた場合、時間外手当(25%の割増賃金)が発生してしまいます。
月を跨いで「振替休日」を取得する場合、本来割増賃金を計上すべき月に計上が漏れてしまうリスクがあります。
振替休日や代休で労働基準法違反になる具体例
例えば、下記のようなケースで労働基準法違反になる場合があります。
- 「代休」を与えたにもかかわらず、35%の割増賃金を支払わないこと
→労働基準法37条に違反し、「6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」が課されるおそれがあります(同法119条)。 - 就業規則に規定がないにもかかわらず、会社側が一方的に「振替休日」を命じること
→労働基準法89条によれば、就業規則に休日・休暇に関する事項を作成し、行政官庁に届け出なければなりません。
会社側による一方的な振替休日の命令は、労働者側の労働内容を変更させる行為であるため就業規則上の規定がなければ、無効な「振替休日」であり、「休日出勤」として扱われる可能性があります。
振替休日や代休などの労務管理でお悩みなら弁護士にご相談ください
「振替休日」と「代休」を混同してしまうと、思わぬ形で未払賃金が発生してしまうといったおそれがあります。
「自社の就業規則の規定は適切なものか」「労務管理に不安がある」といった方は、ぜひ弁護士法人ALGへご相談ください。

-
保有資格医学博士・弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53982)
来所・zoom相談初回1時間無料
企業側人事労務に関するご相談
- ※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円)
- ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。
- ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。
- ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
- ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込み11,000円)