労務

無期転換ルールを回避するための雇止めは違法?事例もあわせて解説

千葉法律事務所 所長 弁護士 大西 晶

監修弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士

  • その他

有期労働契約が無期労働契約に転換すること(いわゆる「無期転換ルール」)を防ぐためには、通算契約期間5年を超える前に、雇用を終了させる等の措置が考えられます。

もっとも、無期転換ルール逃れを目的に雇い止めを行ったところ、訴訟手続に持ち込まれ、結果として会社側が敗訴してしまったというケースは決して少なくありません。

無期転換ルール回避目的の雇止めが必ずしも違法になるわけではありませんが、労働紛争化を防ぐためには、過去の判例や実務上の運用等を踏まえて、常日頃からしっかりと準備をしておく必要があります。

以下、無期転換ルールに関するトラブルを避けるためのポイントを、弁護士が簡単に解説していきます。

無期転換を回避するための雇止めは違法なのか?

無期転換ルール回避目的で雇止めを行ったとしても必ずしも違法となるわけではありませんが、残念ながら違法と判断されるケースは多々あります。
違法になるかならないかの判断を左右するポイントについて説明する前に、まずは基本的な用語からおさらいしていきます。

そもそも無期転換ルールとは

そもそも無期転換ルールとは、下記制度のことを指します。

●労働契約法18条1項

同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(略)の契約期間を通算した期間(略)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。

つまり、簡単に要点だけを言いますと、

  • 有期労働契約が更新されて通算5年を超える期間となった場合、労働者が申し入れれば無期契約への転換がなされる

というルールです。

雇止めには解雇と同程度の厳格な要件が求められる場合がある

無期労働契約への転換がなされると、使用者は、基本的に労働者との雇用関係を終了させるためのハードルが上がると考えられます。

有期労働契約の場合、使用者が期間の満了のときに、満了後の契約更新をしないという通知をすれば、原則として契約終了となりますが、無期労働契約の場合には当然ながら「期間満了」を観念できないため、契約終了させるためには、労働者との間で解約の合意をするか、あるいは解雇をするか等の対応しかとれません。

そのため、使用者には、無期契約に転換される前に(つまり有期契約のうちに)雇用を終了させたい、いわゆる雇止めをしたいというインセンティブが生じます。

特に問題のある労働者との関係では、そのように考えるかと思います。
もっとも、雇止めにも、解雇の場合と同程度に厳格な要件が求められる場合もありますので、ご注意ください。

具体的には下記二つです。

  1. 実質無期契約型
    …業務の客観的内容、当事者の主観的態様、更新の手続などの事情を考慮して、無期労働契約と実質的に同視できる場合。
  2. 期待保護型
    …①が認められなかったとしても、労働者が更新を期待することについて合理性が認められる場合。

無期転換ルールをめぐる雇止めの事例

ここで、無期転換ルールをめぐる雇止めについて、具体的な事例を紹介します。

事件の概要

■龍神タクシー事件(大阪高判平成3・1・16、平2(ウ)822号)
事件概要は以下のとおりです。

Xは、会社Yからタクシー運転手として雇われていました。XY間の労働契約は、1年間の有期契約となっていたところ、会社Yは、1回も更新をすることなく労働契約を終了させました(いわゆる雇止め)。
Xはこれを不服として、従業員たる地位の保全などを求めて紛争化しました。

裁判所の判断

裁判所は、労働者Xが更新を期待することに合理性があるとして、雇止めが許されないとの判断を示しました。つまり、上の②期待保護型の枠内での解決を図ったということです。

ポイント・解説

労働者の期待が合理的か否かという問題は、労働者の主観だけでなく、過去の更新の手続がどうだったか等の客観的な事情も重要な考慮要素となります。
本件において判断を左右したと考えられるのは、

  • 会社において過去に更新を拒絶した事例がなかったこと
  • 更新手続が厳格に運用されていなかったこと
    (※契約更新の際には、改めて契約書が取り交わされることになっていたが、必ずしも契約期間満了の都度「直ちに」新契約締結の手続をとっていたわけではなく、数か月ほど後日にずれ込んだこともあった)
    等の事情です。

この事例からわかる通り、1回も更新をしたことがなかったとしても、諸般の事情から、②型の法理により雇止めが違法と判断される可能性があります。

無期転換ルール逃れで不当な雇止めを行った場合の企業リスク

不当な雇止めと判断された場合、会社側にどのような不利益があるのでしょうか。
仮に、下記事例で考えてみましょう。

  • 1年間の有期契約をこれまで4回更新してきたが、5回目の更新で拒絶された(いわゆる雇止め)
  • 5回目の更新拒絶が不当と判断された

まず不当な雇止めの場合、労働契約法19条により、更新前の労働契約と同一の労働条件で契約したものとして処理されることになります。

●労働契約法19条1項

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

したがって、上記事例においては、5回目の更新がなされたものとして処理されます。
また労働契約期間が通算5年間を超えることになりますので、5回目の更新以降、無期転換ルールを適用できます。
同契約期間中に労働者が申し込みをすれば、次の6回目の更新以降、無期労働契約として扱われることになります。

このように、無期転換ルール逃れのため不当な雇止めを行ったとしても、結局、無期転換ルールが適用されることは免れられないと考えられます。
加えて、雇止めが不当な場合、会社は、労働者が雇止め後に本来得られたはずの賃金の支払い(いわゆるバックペイ)をしなければならなくなります。

雇止めトラブルを防ぐために企業がすべき対応

それでは、上記のような雇止めトラブルを防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか。

通算期間の管理を徹底する

まず初歩的なことですが、通算期間はしっかりと管理しましょう。
どのタイミングで労働者が無期転換ルールの適用を主張できるようになるのかを事前に把握しておくことで、対策は立てやすくなると考えられます。

就業規則を整備する

無期転換後の労働条件(賃金、人事考課等)や無期転換手続の方法も事前に整備しておくことが望ましいです。

基本は無期転換前の条件と同一のルールとするのが原則になるかと思います。
職務内容等が変わっていないにもかかわらず、無期転換後の条件を不利益に変更することは、後で違法・無効と判断されるリスクがありますので、避けた方が無難です。

合意による雇用終了を検討する

無期転換ルールが適用されるようになる前に、合意による雇用終了を目指すのも一つの選択かと思います。労働者との間で合意ができた場合、速やかに退職届を提出してもらうとともに、退職合意書を作成しましょう。

口頭での合意でも法律上は有効ですが、退職条件について後で紛争化することを防ぐために書面化は必要不可欠と考えられます。

無期転換ルールや雇止めに関するお悩みは弁護士にご相談ください

以上のとおり、無期転換ルールや雇止めには無数に注意しなければならないことがあります。

特に雇止めに関しては過去の判例や裁判例の蓄積がありますので、専門家による各事案に応じた判断が欠かせません。お悩みの際には、お気軽に弁護士にご相談ください。

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千葉法律事務所 所長 弁護士 大西 晶
監修:弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長
保有資格医学博士・弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53982)
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