労働者名簿とは、法定三帳簿のひとつで、会社(法律上は「使用者」という場合が多いです)において従業員(法律上は「労働者」という場合が多いです。)を雇い入れる際に、法律上作成・保管が義務付けられている帳簿の一つです。
本記事では、労働者名簿の書き方や記載事項、保管期間などの基本から注意点を解説いたします。
目次
労働者名簿とは?
労働者名簿とは、労働者の氏名や生年月日、履歴などの労働者の基本的な情報が記載されている帳簿です。平たく言ってしまえば、従業員のプロフィール帳になります。
労働基準法107条1項には「使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。」とあり、法律上作成が義務付けられています。
労働者名簿は法定三帳簿のひとつ
会社において法律上作成・保存が義務付けられている帳簿が3つあります。
その3つとは、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿があり、3つをまとめて法定三帳簿といわれています。
労働基準法109条には「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。」とあり、この義務に違反すると罰則として30万円以下の罰金が科せられるおそれがあります(労働基準法120条1号)。
労働者名簿の作成義務がある企業
事業の種類を問わず、企業は労働者名簿の作成義務があります。事業場ごとに作成が義務付けられているため、同じ企業でも、支店がある場合はそれぞれの支店で労働者名簿を作成する必要があります。
労働者名簿の対象となる労働者
原則全ての労働者が対象になります。パートやアルバイトなど、雇用形態に関わらず、全ての労働者を労働者名簿に載せる必要があります。
対象外となる労働者
日雇い労働者については、その異動が激しく、名簿化していくことが困難であるため、対象外とされています。
労働者名簿に記載すべき事項と書き方のポイント
労働者名簿には、前述の労働基準法107条1項に定めがある他、規則により以下の事項が義務付けられています。
「法第107条第1項の労働者名簿(様式第十九号)に記入しなければならない事項は、同条同項に規定するもののほか、次に掲げるものとする。
①性別、②住所、③従事する業務の種類、④雇入の年月日⑤退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)、⑥死亡の年月日及びその原因」(労働基準法施行規則53条1項)」(参照:労働基準法施行規則53条1項)
①氏名・生年月日・性別
本人の特定のため、記載事項について、できる限り戸籍の記載と一致させることが望ましいです。
戸籍上の名前や、性別が変わった場合は会社に何らかの届出をするように、日頃から、従業員には周知しておくと良いでしょう。
②住所
実態を反映させるため、住民票上の住所よりも、現実の住所を記載すべきです。①と同様、引っ越した場合に会社に届出をするように、従業員には周知しておくと良いでしょう。
③雇用の年月日
いわゆる内定を出した日ではなく、雇用した日を記載するようにします。
④従事する業務の種類
労働者がどのような業務に従事しているかが、第三者からも分かりやすいような記載が良いでしょう。
⑤履歴
入社してから、昇進や降格といった、社内での履歴を記載します。
⑥退職・死亡した年月日とその事由
退職の年月日とは、最終出社日ではなく、雇用契約の終了日です。退職した理由を記載します。
死亡による場合はその原因を記載します。
必須ではないが記載しておくとよい事項
住所は必須事項ですが、電話番号やメールアドレスなどの連絡先を記載していくと良いでしょう。
その他、会社によって労働者の知っておきたい事項は異なりますので、労務管理に詳しい弁護士に相談の上、記載事項を定めておくと良いでしょう。
労働者名簿の保管方法・保管期間・更新について
労働者名簿の保管は法律上義務付けられているため、その保管に関しては注意すべき事項があります。
労働者名簿の保管方法
法律上は、どのような形式で保管しても問題ありませんが、労働基準監督官に即座に紙ベースで提出できるように、保管しておくことが求められています。保管期間中破壊汚損されないように、慎重に保管する必要があります。
電子データで保管する場合
電子データで保管することも認められています。即座に提出できるように、一般的なファイル形式で保存する必要があります。機器の破損のおそれがあるため、バックアップを取っておくことをお勧めします。
労働者名簿の保管期間
労働者名簿の保管期間は5年と規定されています。
注意が必要なのは、退職・死亡から5年間は保管しなければいけない点です。
労働者名簿の更新・変更
労働者名簿の記載事項に変化があった場合に、事実を反映させることが望ましいです。
そのため、企業として記載事項の変更が確認できた際に更新していくこと、企業として知っておきたい名前の変更等に関しては、届け出るように周知しておくことが重要です。
労働者名簿を作成・管理する際の注意点
労働者名簿の作成・管理について、法律上・実務上の注意点を解説いたします。
労働者名簿は事業場ごとに作成する
複数の支店がある場合には労働者名簿はその事業場ごとに作成する必要があります。
場所的に近接していても、各部門の独立性が高いと法律上事業場と判断されるケースもあるため、ご不明な点は労務管理に詳しい弁護士に相談すると良いでしょう。
個人情報やプライバシーの取り扱いに気を付ける
労働者名簿に記載されている情報はプライバシー情報であることから、取り扱いには十分注意しましょう。
労働者名簿の管理がずさんであると、情報漏洩のリスクがあり、企業が損害賠償義務を負う場合もあります。
すぐに閲覧・提出可能な状態で管理しておく
管理を慎重に行うことも重要ですが、労働者名簿は労働基準監督官からの提出に即座に応じられるように閲覧・提出可能な状態で管理しておくことが必要です。
労働者名簿の義務違反に対する罰則
労働者名簿の管理に関して、違反があると30万円以下の罰金の刑事罰が定められています。
労働者名簿の作成や保管方法で不明点があれば弁護士にご相談下さい
ここまで、労働者名簿について解説してきました。
労働者名簿の管理は、法律上の義務で、慎重に行うべきです。
実際には、会社ごとに事情が異なるため、どのような労働者名簿を作成して、どのように保管するのが、法的に正しく、また、会社にとって利益になるか異なります。
労働者名簿についてお困りの際は、弁護士法人ALG&Associatesにご相談下さい。
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