交通事故の示談は時効に注意!延長する方法は?

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交通事故の示談は時効に注意!延長する方法は?

千葉法律事務所 所長 弁護士 大木 昌志

監修弁護士 大木 昌志弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士

交通事故に遭って車が破損したり、怪我をしたりした場合、40年、50年先であっても示談できる……とは限りません。損害賠償を請求する権利には、時効があります。

うっかり放置していると権利を失うこともあるので、時効は非常に注意しなければなりません。
「どれくらいの期間で時効にかかるの?」「時効期間が満了しそうなんだけど、どうしたらいいの?」という疑問を持つ人は少なくないと思います。

そこで、以下、弁護士が交通事故の示談において注意すべき時効制度について、わかりやすく説明します。

交通事故の損害賠償請求は3年または5年で時効となる

損害賠償請求権とは、加害者側に対し、交通事故によって発生した損害について、支払いをするよう請求できる権利のことをいいます。

  • 物損(修理費など)の場合、時効期間は短くて3年
  • 人損(治療費など)の場合、時効期間は短くて5年

と一般的に言われることが多いですが、後述するように、起算点の考え方などで注意すべきことはいくつかあります。

※なお令和2年4月1日より前に起きた事故の場合、改正前の時効制度が適用されることになるため、時効期間が異なる可能性があることにご注意ください。

時効のスタートはいつから?

損害賠償請求権の起算点は、基本的に、「被害者又はその法定代理人が損害および加害者を知った時」から3年となることが多いです。

時効期間のカウントの際、初日は基本的に算入しないため、通常の交通事故であれば、交通事故のあった日の翌日から時効期間のカウントがスタートします。

もっとも、例外的に、当て逃げ事故などのように、事故後すぐに「加害者を知」ることができない場合には、基本的に、以下①②のうち、いずれか早い方が基準になると考えられます。

  1. ①加害者の氏名・住所が判明した日の翌日から3年(物損事故の場合)、もしくは5年(人身事故の場合)
  2. ②事故発生日の翌日から20年
事故の種類 時効
物損事故 事故発生日の翌日から3年
人身事故
  • ①後遺障害がない場合
    事故発生日の翌日から5年
  • ②後遺障害がある場合
    症状固定日の翌日から5年
死亡事故 死亡した翌日から5年
当て逃げ・ひき逃げ

①②のうちいずれか早い方が基準となります。

  • ①加害者の氏名・住所が判明した日の翌日から3年(物損事故の場合)、もしくは5年(人身事故の場合)
    ※なお人身事故かつ後遺障害のあるケースにおいて、加害者の氏名・住所が判明した日が、症状固定日の前である場合には、症状固定日の翌日が起算点となります。
  • ②事故発生日の翌日から20年(物損事故・人身事故ともに)

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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交通事故示談で時効が近い場合の注意点

時効が成立し、かつ加害者側が時効による権利消滅を主張した場合、被害者側は基本的に1円も請求できなくなります。

そうなると、できるだけ早めに示談をしたいと思われるかもしれませんが、示談は原則として、やり直しができないため、本当にその金額が妥当なのかについて慎重に判断する必要があります。

実際に、加害者側の提示額でそのまま示談をするのはあまり得策でないことが多いです。

金額の検討や交渉には長くて数か月ほどかかると思われますので、時効が気になる場合には、時効の期限を延ばす方法を取りましょう。

交通事故の時効を延長する方法は?

時効の完成を防ぐための制度としては、①時効の完成猶予と、②時効の更新の二つがあります。

①時効の完成猶予とは、わかりづらい表現ですが、要するに時効の完成を一時停止するための制度です。たとえば、

  • 催告
  • 裁判上の請求などがあります。

一方で、②時効の更新とは、時効の期間をリセットするための制度です。

たとえば、

  • 加害者側に債務を承認してもらうこと
  • 裁判上の請求(基本的には判決まで必要)などがあります。

請求書を送付する(催告)

①時効の完成を一時停止するために、請求書を送付するという手段(催告)を行うことができます。口頭での催告も有効ですが、きちんと証拠を残すため、内容証明郵便などを利用して書面で催告をする方が良いと思います。

催告がなされた場合、時効の完成が6か月間猶予されます。もっとも、催告による時効の完成の一時停止が認められるのは、一度だけです。

したがって、上記6か月が経過する前に、債務の承認や裁判上の請求などの別の手段をとる必要があります。

加害者に債務を認めてもらう

②時効の更新(リセット)のために、加害者に債務を認めてもらうという手段があります。

債務の存在を書面で認めてもらう場合だけでなく、示談金の一部の仮払いなど債務の存在を前提とした言動もまた、債務の承認にあたる場合があります。

裁判を起こす

①時効の完成が猶予されるのは、訴状の提出時です(民事訴訟法147条)。

仮に時効の完成まであと100日というところで訴状を提出した場合、残り100日というカウント自体は停止したまま、訴訟が進行していくということになります。

もし勝訴判決が得られ、かつ控訴もされなかった場合には、時効のカウントはリセットされます。

示談が進まない場合の対処法

示談が成立しない場合、弁護士会の行うADR(裁判外紛争処理手続)や紛争処理センターなどの簡易的な手続を利用して、示談交渉を進めていくのが良いと思います。

紛争処理センターは、被害者さえ納得すれば保険会社を拘束する内容の示談をすることができますので、おすすめです。

交通事故で時効が気になる場合は弁護士にご相談ください

万が一時効が完成してしまった場合、示談金が0円になってしまうという可能性があります。

そのため時効が迫っている場合には、早く対応をしなければ、という焦りから、低い金額で示談をしてしまう人も少なくありません。

もっとも、大事な車両や身体、ないしその後の未来を守るためにも、しっかりと妥当な金額の支払いを受ける必要があります。

時効が迫っている場合の対応について不安なことがありましたら、まずは弁護士にご相談ください。

千葉法律事務所 所長 弁護士 大木 昌志
監修:弁護士 大木 昌志弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長
保有資格医学博士・弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53980)
千葉県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。