離婚調停が不成立になった場合の対応

離婚問題

離婚調停が不成立になった場合の対応

千葉法律事務所 所長 弁護士 大西 晶

監修弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士

夫婦の話し合い(協議離婚)で離婚が成立せず、裁判所で行われる「離婚調停」に発展するケースも少なくありません。離婚調停に発展したとしても、夫婦で協議することには変わりませんので、折り合いがつかなければ、不成立に終わってしまうこともあります。
離婚調停が不成立となってしまった場合、その後どうすればよいのでしょうか?

今回は、離婚調停が不成立になるケースをふまえて、不成立となった後の対応について解説していきます。
調停不成立にならないためのポイントも紹介していきますので、スムーズに調停を進める参考になれば幸いです。

離婚調停が不成立になる時とは?

離婚調停は、夫婦が合意に至らず、調停を成立させることができない場合に、調停不成立となって手続が終了します。
離婚調停が不成立となるパターンには、大きく3種類あります。

①調停委員が不成立と判断する
②調停を取り下げる
③当然終了

それぞれ、詳しくみていきましょう。

調停委員によって不成立と判断される

離婚調停を担当する調停委員によって、調停が成立する見込みがない=不成立と判断されることがあります。

離婚調停では、1名の裁判官と、男女1名ずつの調停委員で構成された「調停委員会」が、夫婦の間に入って、話し合いによって離婚の合意を目指します。
調停委員が夫婦別々に事情を確認し、助言や解決案を提示するなどして、離婚の合意ができるように働きかける中で、合意の見込がないと判断すると、調停は不成立となります。
基本的には、当事者の合意が見込める限り、何回か調停が繰り返されますが、当事者の意見の対立が激しく、合意が全く見込めないような場合は、1回目であっても不成立と判断される可能性もあります。

離婚調停を途中で取り下げる

調停の申立人は、自らの意思をもって、相手の同意を得ることなく、いつでも離婚調停を取り下げて調停を終わらせることができます。

ただし、調停を取り下げた後、すぐに離婚裁判を起こせない点に注意が必要です。
日本の法律上、離婚裁判を起こすためには、原則、離婚調停を経る必要があります。
これを「調停前置主義」といって、途中で取り下げをした調停は「なかったこと」の扱いになって、調停を経ていないと判断されてしまうのです。
また、調停を取り下げた場合、厳密には「調停不成立」とはならず、「不成立証明書」が発行されません。
離婚裁判を検討している場合、調停を取り下げるかどうかは、慎重に判断しましょう。

当然終了

当然終了とは、調停を続ける必要がなくなって、当然に調停が終わることです。
例えば、夫婦のどちらかが調停の最中に亡くなったケースです。
配偶者が亡くなったことを裁判所に報告した時点で、調停は終了となります。

離婚調停が不成立と判断されるケース

離婚調停は、夫婦の合意が見込めないと調停委員に判断された場合に不成立とされます。
調停不成立と判断される、典型的なケースは次のとおりです。

①相手が離婚調停を欠席する
②相手が離婚を拒否する
③親権で争っている
④財産分与の対象や金額に納得できない

以下、詳しくみていきましょう。

離婚調停を相手が欠席

相手が離婚調停の欠席を繰り返すと、調停不成立と判断される可能性があります。

調停を1回欠席しただけで、ただちに「不成立」と判断されることは少ないです。
ですが、2回以上調停の呼び出しに応じず、無断で欠席を繰り返すようであれば、話し合いによる解決は見込めないと判断され、調停不成立となって終了することがあります。
相手が離婚調停を欠席し続ければ、調停委員会の心証は悪くなり、主張もできない分、離婚の可否や離婚条件を判断する際に、こちら側が有利になる可能性もあります。

相手が離婚を拒否

相手が断固として離婚を拒否している場合も、話し合いによる合意が見込めないと判断され、調停不成立となります。

相手の意思が固く、調停委員からの提案に聞く耳をもたないようなケースでは、話し合いは平行線のまま、調停を進めることができなくなってしまいます。
このような場合、まずは相手が離婚を拒否する理由を明確にすることが大切です。
調停委員に、相手がなぜ拒否しているのか理由を確認してもらい、対策を講じましょう。

親権で争っている

夫婦に未成年の子供がいる場合に、離婚後の親権について争いがあるケースでも、調停不成立となることがあります。

日本では、婚姻中の夫婦は共同で親権を持ちますが、離婚後は単独親権となるため、離婚するにあたり、夫婦どちらが親権者となるかを決める必要があります。
離婚自体は合意できていても、親権が決まらないことも少なくありません。
こうしたケースでは、離婚と親権の問題を分離して、離婚だけを調停で成立させて、親権を審判に移行して裁判所に決定を委ねる方法もあります。
ただし、審判では異議申立てが可能で、効力の乏しさや、長期化するおそれがあることから、実際にこの方法がとられることは少ないです。
多くは、調停不成立となった後に、離婚裁判で争うことになります。

財産分与の対象や額に納得できない

離婚自体に合意できても、財産分与の対象やその額について争いがあると、話し合いが進まず、調停不成立となる可能性があります。

未成年の子供の親権とは異なり、財産分与については、離婚した後でも取り決めることができるので、離婚と分離して話し合うこともできます。
もっとも、離婚と財産分与を分離してしまうと、財産分与の交渉が困難になるおそれがあるため、離婚と同時に解決することが望ましく、離婚調停を不成立とした後、離婚裁判において、裁判所に判断してもらうことが多いです。

離婚調停が不成立と判断された場合のその後

離婚調停が不成立と判断された場合、その後どうすればよいのでしょうか?
一般的には、次の4つの選択肢から、ご自身に合った方法を選ぶことになります。

①再協議
②再調停
③審判離婚
④離婚裁判

以下、それぞれ詳しくみていきましょう。

当事者間で再び協議する

離婚調停が不成立となった後、夫婦で再び協議をすることが可能です。
調停をふまえ、根気強く相手と話し合う中で、妥協点や解決策が見えてくる可能性があります。
あらためて夫婦で話し合って合意できれば、自由な条件で離婚を成立させることもできます。

再調停はできるのか

離婚調停の申立てに、期間や回数の制限はないので、調停不成立後に、再び離婚調停の申立てをすることもできます。
もっとも、当事者の考えや状況が変わらなければ結果も変わりません。
再度離婚調停を行うのであれば、時間や距離を置くことも検討しましょう。

審判離婚

審判離婚とは、ささいなことで離婚調停が成立しないときに、裁判官の判断によって離婚を認める制度です。
夫婦双方に離婚の意思があるのに、ささいな条件が折り合わない場合や、子供のために結論を急ぐ場合などで行われることがあります。
ただし、審判に対して異議申立てが認められていて、効力が乏しいことから、実際に審判離婚が行われることはほとんどありません。

離婚裁判

離婚裁判とは、離婚調停が不成立となった場合に、離婚を求める側が訴訟を提起して、裁判官が判決を下して離婚を成立させる手続です。
もっとも、裁判官によって和解を促されることも多く、夫婦双方が歩みよることができれば、和解によって離婚裁判を終わらせることもできます(和解離婚)。
なお、離婚原因を作った有責配偶者からの離婚請求は原則認められないため、調停が不成立になったからといって、すぐに訴訟が提起できるとは限りませんので注意が必要です。同様に,どちらか一方が離婚を拒否している場合には,離婚裁判において,離婚原因を認めてもらうために,一定の別居期間を設ける必要があるケースもあります。離婚調停が不成立となった後,離婚裁判を提起するタイミングについては,弁護士に相談するのが良いでしょう。

離婚調停不成立にならないためにできることとは?

離婚調停が不成立となってしまうと、その後の対応に、より手間がかかることになります。
離婚裁判になれば、費用や精神的な負担も大きくなってしまいます。
そこで、できるかぎり調停で離婚を成立させるための対策をご紹介します。

希望の条件に優先順位をつけておく

希望の条件に優先順位をつけておきましょう。
絶対に譲れない条件と妥協できる条件をあらかじめ決めておき、ただ自分の希望を通すだけでなく、譲歩する姿勢を示すことで、調停委員会に与える心証もよくなり、調停が有利に進む可能性もあります。

感情的にならない

離婚調停では、感情的にならず、冷静に話し合う姿勢を示すことが大切です。
例え相手に落ち度があったとしても、愚痴や不満を伝えても離婚が成立することはなく、かえって調停委員に悪い印象を与えかねません。
相手の主張に耳を貸さず、感情のまま一方的に主張を続けてしまうと、話し合いによる解決はむずかしいと判断される可能性があるので、冷静に、端的に事実を伝えるようにしましょう。

弁護士に頼る

弁護士に依頼することで、離婚調停の不成立を避けられる可能性が高くなります。
調停で有利な資料集めや、主張の整理など、専門家の視点からアドバイスを受けられるので、納得のいく結果が得られやすくなります。
調停をどう進めるべきか、少しでも不安を感じたら、まずは弁護士に相談してみましょう。

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よくある質問

離婚調停不成立後、別居する際に気を付けることはありますか?

離婚調停が不成立となった後、離婚に向けて別居することは、有効な手段のひとつです。
ただし、一歩間違うと、かえってご自身の立場が不利になることもあるため、次のことに注意しましょう。

●一方的な別居は避けましょう
一方的な別居は、夫婦の同居義務に違反し
悪意の遺棄を行った有責配偶者とみなされるおそれがあります
別居の意思を相手に伝え、同意を得るようにしましょう


●親権を獲得したい場合、子供を連れて別居しましょう
別居中、問題なく子供の養育が行われていれば
親権獲得の大きなポイントとなります
相手の同意を得て、違法な連れ去りだと主張されないようにしましょう

 

●別居前に証拠を集めておきましょう
相手の財産や浮気などの証拠は
別居すると集めるのが困難になるため
できるかぎり、別居する前に集めておきましょう

離婚調停が不成立で終わった場合でも養育費や婚姻費用は受け取ることはできますか?

離婚調停が不成立で終わった場合でも、当事者の収入や子の監護状況によっては、婚姻費用を受け取ることができます。
婚姻費用とは、夫婦の同居・別居にかかわらず、婚姻関係にある夫婦や未成熟子の生活を維持するために必要な費用のことで、生活費や子供の養育費が含まれます。
離婚が成立しない限り、収入の低い方は、収入の高い方に婚姻費用を請求することができます。
婚姻費用が支払われない、あるいは受け取っている婚姻費用が少ない場合は、婚姻費用分担請求調停の申立てが可能です。
なお、離婚後は婚姻費用の請求ができなくなるので、子供と離れて暮らす親は、養育費を支払うことになります。

調停不成立から裁判を起こすまでに決められた期間はありますか?

離婚調停が不成立となってから、離婚裁判を起こすまでの期間について、「いつまでに裁判を起こさなければならない」という定めはありません。
裁判所にもよりますが、一般的には、調停不成立後1年以内であれば、問題なく訴訟提起を受け付けてもらえることが多いです。
調停不成立から2年以上経ってしまうと、もう一度話し合えば、以前とは違った結論が出る可能性もあるとして、裁判所から再度、協議や調停をするように言われる可能性があります。
そのため、離婚裁判を起こすことを考えているのであれば、調停不成立後1年以内を目安に、準備を進めるとよいでしょう。
なお、調停不成立後2週間以内に裁判を起こせば、調停の申立時に納めた手数料を、訴訟提起の手数料に割り当ててもらえる場合もあります。

離婚調停が不成立になった場合、別の裁判所で再度離婚調停や離婚裁判などを行うことはできますか?

離婚調停が不成立となった場合に、調停とは別の裁判所で、再度離婚調停や離婚裁判を行うことは可能です。
ただし、どこの家庭裁判所でもよいというわけではありません。


●離婚調停
相手方の住所地の管轄となっている家庭裁判所、または夫婦が合意で定める裁判所


●離婚裁判
原則として夫婦どちらかの住所地を受け持つ家庭裁判所 なお、調停を行った裁判所が違う場合、調停を行った裁判所で訴訟提起することも可能


例えば、最初に妻の住所地の家庭裁判所で調停を行い、不成立となった後に、夫の住所地の家庭裁判所で、離婚裁判を行うことも可能です。
調停と異なる家庭裁判所で裁判を起こす場合、調停を行った家庭裁判所から「不成立証明書」を取得し、提出する必要があります。
これは、調停が不成立になったことを確認するために必要なためです。

離婚調停の不成立を回避したい場合、経験豊富な弁護士への依頼がお勧めです。

離婚調停が不成立となった後の対応には、いくつかの方法があります。
その中で、ご自身に合った対応を選択できればよいのですが、なかなか適切に判断することはむずかしいです。
対応を見誤ってしまうと、離婚の成立がどんどん遅くなってしまいます。
できるかぎり調停で離婚を成立させるためにも、離婚問題に精通した弁護士へ早期に相談することをおすすめします。
離婚調停に有効な資料の集め方から、法的観点からの主張の仕方、事前シミュレーションなど、さまざまなサポートが受けられるので、より希望に近い条件で離婚を成立させられる可能性が高まります。
離婚調停でお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

千葉法律事務所 所長 弁護士 大西 晶
監修:弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長
保有資格医学博士・弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53982)
千葉県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。