監修弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士
離婚に関する協議や調停にどれくらいの時間を要するかは、基本的に争点の数によります。
争点の数が多くなればなるほど協議が長引く一方で、逆に争点の数が少ない場合には、短期間で交渉がまとまりやすい傾向にあります。
子供のいない夫婦の場合、親権や養育費等のもめやすい争点がなくなるため、比較的短期間で解決できることが多いですが、必ずしもすべてのケースが迅速に解決できるわけではありません。
以下、子なし夫婦の離婚のメリット、デメリットや離婚の流れなどについて、説明していきます。
子なし夫婦の離婚率
厚生労働省の「令和6年人口動態統計」によると、
- 離婚した夫婦のうち子なし夫婦の割合……約49%
- 離婚した夫婦のうち子あり夫婦の場合……約51%
であることがわかります。
子供の有無は、離婚率にさほど大きな影響は与えていないようです。
「子供がいない場合の方が、離婚協議の争点が少ない」と考えるならば、子なし夫婦は離婚しやすく、逆に、「子はかすがい。夫婦のきずなを強化する」「子供がいる場合は、簡単には離婚すべきでないとの意識が働く」と考えるならば、子あり夫婦の場合は離婚しづらいことになりそうですが、両者の離婚率に有意な差はないようです。
子供がいる方がかえって夫婦間で教育方針や育児の分担等をめぐって対立が生じやすく、亀裂が生じやすいといった事情も関係しているかもしれません。
子なし夫婦が離婚を考える理由
子どものいない夫婦が離婚を考える背景には、夫婦ごとに異なる事情が存在しますが、一定の傾向として「子を持つか否か」に関する価値観の相違が大きな要因となりやすいと言えます。
子どもを望むかどうかは人生設計の根幹に関わる問題であり、どちらか一方が強く希望し、他方が明確に否定する場合、話し合いによる折り合いをつけることが極めて難しくなります。
また、子育てを前提としない生活スタイルやキャリア志向の違いが浮き彫りになり、夫婦としての将来像が共有できなくなるケースもあります。
こうした価値観のズレが積み重なることで、互いの人生を尊重するために離婚という選択肢が現実味を帯びてくることが多いです。
子なし離婚のメリット
子なし夫婦の離婚の場合、すでに説明しているメリット(争点が少ないから短期間で解決しやすいこと)の他に、以下のメリットが考えられます。
■再婚や再就職が比較的容易であること
子供がおり、かつ親権者として単独で監護することになった場合、どうしても生活を子供中心とせざるを得ません。
一方で、子なし夫婦の場合には、良くも悪くもそういった「制約」がないため、再婚や再就職など自分の人生の再出発をしやすいという特徴があります。
■元配偶者との縁を切れること
離婚により夫婦は法的に他人同士となりますが、親子の関係まで断ち切られるわけではありません。子供がいる夫婦の場合には、離婚後も、親子交流(面会交流)等のために連絡を取り続ける必要があるのが実情です。
一方で、子なし夫婦の場合には、離婚後、基本的に連絡を取る必要が生じないため、完全に元配偶者との縁を切ることができると考えられます。
DVやモラハラが原因で離婚した夫婦の場合には、元配偶者と連絡を取るだけでも相当なストレスですから、精神的な負担が軽くて済むという点で、これは大きなメリットと言えます。
子なし離婚のデメリット
子なし夫婦の離婚固有のデメリットは、特にありません。もちろん(子なし夫婦であるか否かにかかわらず)離婚それ自体には、デメリットがあると考えられます。
たとえば、
- パートナーを失うことによる精神的な喪失感
- 別居により経済的な負担が増大すること
等があります。
最終的には、これらのデメリットと離婚のメリットを総合的に考慮して、離婚すべきか否かを判断することになるでしょう。
子なし夫婦が離婚をするときの流れ
子供がいるか否かにかかわらず、離婚をするときの流れは変わりません。
具体的には、
- 協議離婚
- 調停離婚
- 裁判離婚
の3つが考えられます。
※厳密に言えば、裁判中にも和解により離婚すること(いわゆる和解離婚)も可能であり、実務上その件数は少なくありません。
もっとも、当事者で離婚の条件について合意して手続を進めるという意味で、和解離婚は調停離婚等に類似する性質を有しますので、今回、和解離婚に関する説明は省略しています。
協議離婚
協議離婚とは、夫婦の話合いにより離婚の条件(財産分与、慰謝料、年金分割)を決めて離婚する手続です。
話合いにより解決するという点で、協議離婚は後述の調停離婚と類似しますが、一方で裁判所を介するか否かという点で両手続は異なります。
協議離婚は、あくまで裁判所を介さず当事者だけで話合いを行う手続です。
協議離婚について詳しく見る離婚調停
当事者同士で話合いができなかった場合(離婚のための協議が決裂した場合)や、相手方の性格等により議論が望めない場合などには、家庭裁判所に対し離婚調停を申し立てて、調停離婚の手続に進んでいきます。
調停手続は期日が約1か月に1回とややスローペースであるため、時間こそかかりますが、調停委員という第三者が間に入り議論を整理してくれるため、着実に議論を進めていけるというメリットがあります。
離婚裁判
離婚調停において話し合いがまとまらず、調停が不成立となった場合、さらに離婚の話を進めていくためには、離婚訴訟を提起しなければなりません。
仮に片方の配偶者が離婚を拒否している場合であっても、裁判官が「法定離婚事由がある」と判断した場合(※典型的には、相手方が不貞行為やDVをしていた場合、別居期間が3年間以上の場合等に法定離婚事由ありと認められます)には、基本的に離婚請求が認められることになります。
離婚裁判について詳しく見るあなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
子なし離婚するときに準備すべきこと
離婚の方針を固めたら、いくつかやるべきことがあります。
ここで準備ができるかどうかによって、この後の結論に大きな影響が生じうるため、事前の準備はしっかりと行いましょう。
離婚後の生活に向けて準備する
離婚後は、生活基盤を自力で整える必要があるため、転居先の確保や就職・転職活動、収入計画の見直しなど、具体的な準備が欠かせません。
特に住居や仕事は生活の根幹を支える要素であり、早い段階から情報収集や手続を進めておくことで、離婚後の不安を大きく減らすことができます。
また、「離婚後も経済的に自立して暮らしていける」という見通しが立つことで、精神的な余裕が生まれ、感情に流されず冷静に離婚協議を進められるという利点もあります。
こうした準備は、離婚後の生活を安定させるための重要なステップと言えるでしょう。
共有財産をチェックする
財産分与で必要となるため、相手方名義の資産に関する証拠(預貯金口座の通帳や証券に関する報告書等)の写しを確保しましょう。
これらは相手方名義の資産とはいえ、婚姻期間中に築いた財産は原則として夫婦の共有財産となるため、財産分与の対象となります。
相手方が財産情報を任意に開示しないこともしばしばあるため、財産分与で不利にならないようにすべく、これらの情報は事前に調べておくのがベターです。
離婚条件を決める
離婚を検討する際には、慰謝料や婚姻費用などの条件について、あらかじめ大まかな方針を整理しておくことが重要です。事前に方向性を固めることで、準備すべき事項が明確になり、効率的に手続きを進められます。
例えば慰謝料を請求する予定であれば、モラハラやDVの有無を示す証拠を早期に収集する必要がありますし、婚姻費用を求める場合には、相手方の収入資料を把握しておくことが実務上不可欠です。
このように、離婚条件の見通しを立てることは、交渉を円滑に進めるための基盤となります。
弁護士に相談する
離婚条件を検討する際には、一度弁護士に相談して専門的な助言を得ることが望ましいです。ネット情報や生成AIで基本的な知識を把握することは可能ですが、情報の正確性や個別事案への当てはめには限界があります。
法律は画一的に適用されるものではなく、事案に応じて例外的な判断が必要となる場合も少なくありません。
こうした点を踏まえると、より確実で実情に即した方針を立てるためには、弁護士の助言を受けることが有効といえます。
子なし夫婦の離婚問題・お悩みは弁護士法人ALGにご相談ください
既にお話ししたとおり、事案ごとに最善の決定を考えるためには、弁護士の助言を受けることが一番確実です。
弁護士というと敷居が高いような印象があるかもしれませんが、どうぞお気軽にご相談ください。

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保有資格弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53982)
