監修弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士
- 解雇
契約社員は、正社員に比べて地位が不安定なイメージがあるため、簡単に解雇できると考えている方も多いかと思います。
しかし、契約社員の解雇の方が正社員の解雇よりも、むしろハードルが高いのが一般的です。
十分に検討せずに契約社員を解雇した場合、不当解雇に当たる等の理由から、労働審判等のトラブルに発展するおそれがあります。
そこで、以下、契約社員の期間途中の解雇に関して、注意すべきことを解説していきます。
なお、以下「契約社員」とは期間の定めのある労働契約を締結した労働者のことを言い、「正社員」とは期間の定めのない労働契約を締結した労働者のことを言うものとします。
目次
契約社員を契約期間の途中で解雇することはできる?
原則として、契約社員を途中で解雇することはできません。
例外的に、契約社員の解雇が認められるためには、解雇の場合に通常要求される要件に加えて、「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項)が必要です。
第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
このように契約社員の期間途中の解雇が制限的に解されているのは、期間の終了まで雇用されることに対する労働者の期待保護などの理由からであると考えられます。
「やむを得ない事由」がある場合は例外的に認められる
上述のとおり、「やむを得ない事由」が認められる場合には解雇が認められると考えられます。
もっとも、「やむを得ない事由」は、通常の解雇の要件よりも厳格に解されます。
一般的には、当該契約期間は雇用を継続するという約束であったにもかかわらず、期間満了を待たずに直ちに雇用を終了せざるを得ないような重大な事由が必要とされます。
能力不足を理由に契約社員を解雇できるのか?
正社員の解雇事例ですが、裁判所は、単なる能力不足や成績不良を理由とする解雇の是非について、慎重に判断する傾向にあります。
たとえば、エース損害保険事件(東京地決平成13・8・10)は、長期雇用システム下で定年まで勤務を続けていくことを前提として長期にわたり勤続してきた正社員の解雇が問題となった事例ですが、裁判所は以下のとおり、厳格な規範を設定しています。
「それが単なる成績不良ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じる恐れがあり、企業から排除しなければならない程度に至っていることを要し、かつ、その他、是正のため注意し反省を促したにもかかわらず、改善されないなど今後の改善の見込みもないこと、使用者の不当な人事により労働者の反発を招いたなどの労働者に宥恕すべき事情がないこと、配転や降格ができない企業事情があることなども考慮して濫用の有無を判断すべきである。」
このように能力不足を理由とする正社員の解雇が厳格に考えられていることからすると、能力不足を理由とする契約社員の解雇はより一層慎重になる必要があると言えます。
契約期間中の契約社員の解雇が認められた判例
一方で、契約期間中の契約社員の解雇が認められた事例も一定数あります。
以下、重大な能力不足を理由に契約社員の解雇が認められた珍しい事例を紹介します。
事件の概要
■東京地判平成25年1月31日(リーディング証券事件、事件番号H23(ワ)26760号、2013WLJPCA01318014)
■事案の概要
- 外国籍のXが、証券アナリストとしての能力を買われて、Y社に契約社員として採用された。
- しかし、Xが作成したレポートは、いずれも誤字脱字が散見されるほか、随所に文法の誤りだけでなく、曖昧かつ不適切ないしは趣旨不明の表現が見られ、日本語の表現としてその意味を容易に理解することが困難な内容のものであった。
- Y社がXを期間途中で解雇したところ、Xが慰謝料などの支払いを求めて提訴に至った。
裁判所の判断
■結論
解雇は適法であると判断しました。
■理由
裁判所は、「やむを得ない事由」は、通常の解雇の要件よりも厳格に解すべきであるとして、「雇用期間の満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるを得ないような特別の重大な事由」が必要であるとの規範を立てました(通常の解雇の要件に関連する部分は省略)。
そして、本件において、Xの日本語能力はY社が期待した能力に遠く及ばないものであること等を理由に、上記重大な事由を認めました。
ポイント・解説
上記裁判例は、重大な能力不足を理由に契約社員の解雇を認めたという意味で、リーディングケースの一つと言えます。
もっとも、上記裁判例の結論をどこまで一般化できるかについては注意が必要です。
裁判所が重視した本件特有の事情として、以下の事情があります。
- XはY社に入社する前にアナリストとしての試験を受けているところ、当該試験で提出したレポートは、Xの配偶者の協力の元作成されたものであったこと
- Xは上記事実を隠したまま採用されたこと
裁判所は、これらの事情から、Xが使用者との間の信頼関係を根本から喪失させたと判断しました。
また「専門能力を買われて入社した」という経緯も、能力不足の重大性ないし解雇の必要性を基礎づけていると考えられます。
したがって、能力不足を理由とする解雇を検討するにあたっては、このような前提事情の有無も確認する必要があるでしょう。
契約社員を契約期間中に解雇する場合は解雇予告が必要
仮に「やむを得ない事由」が認められそうな場合、その他に気を付けるべきこととして、解雇予告に関する規制があります(労働基準法20条1項)。
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
つまり、
- ①使用者が解雇をしようとする場合、少なくとも30日前にその予告をしなければならない
- ②30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない
ことになります。
契約社員は契約期間満了による雇い止めが原則
ここまでお話ししてきたとおり、期間満了前に契約社員を解雇することのハードルは高いです。
したがって、契約社員との間の雇用契約を終了させるとしたら、期間満了時の雇い止めを行うという方法が王道です。
雇い止めには「合理的な理由」が必要
もっとも、雇い止めも無制約に認められるわけではありません。
一定の場合には、労働者の期待を保護するため、通常の解雇と同様の要件(=客観的な合理性と社会通念上の相当性)が必要となります。
契約社員の雇い止めが違法になるケースとは?
雇い止めに厳格な要件が必要とされるのは、以下の二つの場合です。
- ①有期労働契約が、期間の定めのない契約と実質的に同視できる場合
- ②契約社員の契約更新に対する期待を保護すべき場合
どのような事情があるとき、①②に該当するかについては、以下の記事で詳しくまとめておりますので、こちらをご参照ください。
雇止め法理とは雇い止めが不当と判断された場合のリスク
雇い止めが不当と判断された場合、たとえば以下のようなリスクがあります。
- 労働者の職場復帰を認めなければならない。
- 雇止めをした日から生じている未払い賃金(いわゆるバックペイ)の支払いをしなければならない。支払額に付加金が上乗せされ、支払額が増額するリスクもある。
- 労働者に慰謝料を支払わなければならない。
- 裁判沙汰になること等により、会社の社会的信用が低下するリスクがある。
契約社員の雇い止めにも解雇予告は必要なのか?
以下のいずれかに該当する場合、30日前までに雇い止めの予告が必要です。
- 3回以上契約が更新されている場合
- 通算1年を超えて、継続して勤務している場合
- 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
契約社員の解雇トラブルを防止するためにも弁護士にご相談ください
以上のように、契約社員の解雇には注意点が多数あります。
後のトラブルを防ぐという観点から、お悩みの際には、ぜひ弁護士にご相談ください。

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保有資格医学博士・弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53982)
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