監修弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士
離婚が交渉や調停等の話し合いでまとまらず裁判になったという場合に、弁護士を付けずに自分で対応することはできるのか、またその場合に自身に不利にならないか等のご不安を抱えている方は少なくないかと思います。
この記事では、離婚裁判を弁護士なしで行うことができるのか、また離婚裁判において弁護士を付けないことのデメリット等について解説します。
目次
離婚裁判は弁護士なしでも対応できる?
結論から申し上げますと、離婚裁判は、弁護士なしでもご自身で対応することが可能です。
離婚裁判において必ず弁護士をつけなければならないという法律は存在しないからです。
ただ、以下に述べるように、離婚裁判を弁護士なしで対応する場合には、多くのデメリットが存在します。
離婚なんて家庭内の問題なのだから弁護士なんか付ける必要はないと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、離婚裁判は、いわゆる「裁判」ですから、自己の主張がいかに法的に正しいかということにつき、裁判官を説得する必要があるわけです。
単純に事実を羅列したり、感情的に訴えたりするだけでは自身に有利な判決をもらえるとは限らないのです。
弁護士なしで離婚裁判を行うデメリット
弁護士なしで離婚裁判を行うデメリットとしては、大きく分けて、以下の5点が挙げられます。
- 書面の用意や裁判の出席などで労力がかかる
- 離婚原因が主張できず、自身にとって不利に進む可能性がある
- 相手に弁護士がついている場合、不利になる可能性が高い
- 弁護士に依頼するよりも長期化しやすい
- 一人で対応することによるストレスが大きい
以下、一つずつ解説いたします。
書面の用意や裁判の出席などで労力がかかる
先述の通り、裁判においては、裁判官に対し、自己の主張が法的に正当であることを説得する必要がありますが、離婚裁判は、自身の主張を書面にまとめて期日までに提出するという方法で進行していきます。
つまり、期日までに、証拠を集め、事実を整理し、その事実に基づいてどのように説得的な文章を書くかを考え、実際に起案するという作業が必要になるわけです。
また、裁判所は平日しか開いていないので、期日も当然平日に行われることになります。
期日はおおよそ月に1回開かれますので、その期日に合わせて毎月仕事や家庭の都合を調節しなければならないのです。
離婚原因が主張できず、自身にとって不利に進む可能性がある
離婚裁判において、裁判官に離婚を認めてもらうためには、法律で定められた離婚事由があると認められる必要があります。
法律で定められた離婚事由は、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条各号)の4つになります。
つまり、自身が相手と離婚したい理由や、具体的な事実が、上記のいずれかに該当することを主張していかなければならないのです。
上記の4つの離婚事由の中には、日常的に聞き慣れない言葉も存在し、相手と離婚したい理由や具体的な事実が、法律で定められた離婚事由に該当するのかを判断するのは容易ではありません。
適切に事実を整理して法律にあてはめた主張ができなければ、裁判が自身にとって不利に進行してしまいかねないのです。
相手に弁護士がついている場合、不利になる可能性が高い
離婚裁判において、適切に事実を整理して法律にあてはめた主張をして、裁判官を説得する必要があるということは、先述の通りです。
弁護士はこうした主張には慣れているので、相手方に弁護士がついている場合、自身にとって不利に裁判が進行してしまう可能性がより高まることは言うまでもありません。
弁護士に依頼するよりも長期化しやすい
最高裁判所の令和6年度の統計によれば、離婚裁判の終結までに要する期間は、平均して約15か月となっています。
基本的に離婚裁判ともなれば、弁護士に依頼する方がほとんどでしょうから、弁護士に依頼した場合であっても、離婚訴訟の終結までに要する期間は平均して1年3か月程度ということになります。
ご自身で対応するということになれば、争点整理や手続等に不慣れな分、これ以上に時間を要すると考えられます。
一人で対応することによるストレスが大きい
離婚裁判まで紛糾している場合、当事者の間での対立も相当激化していると考えられます。
そもそもの離婚による精神的疲労も大きいことに加えて、先述したような不慣れな手続きや法律用語に長期間さらされ続けることで、自身が多大なストレスを受けることは容易に想像できます。
また一人で対応するわけですから、そのストレスを共有できる相手がいないというのも精神的苦痛の要因になりえます。
離婚裁判を弁護士なしで進めるときの流れ
① 訴状作成・書類の準備
離婚裁判をご自身で進める場合、まず、離婚裁判を裁判所に提起する必要があります。
そのためには、訴状と呼ばれる書面を作成する必要があります。
ここには、法律上定められた離婚事由があることを記載するのは当然のことながら、離婚に付随する条件(親権、財産分与、養育費、慰謝料等)についても主張したいことがあるのであれば、記載する必要があります。
また添付資料として、取得から3か月以内の戸籍謄本や、調停不成立証明書等の資料を準備する必要があります。
さらに、訴訟の提起にあたり、一定額の印紙、郵券等も必要になります。
② 家庭裁判所へ訴状など必要書類一式の提出
作成した訴状や添付資料は、家庭裁判所の窓口に持参して提出するか、受付宛に郵送して提出する必要があります。
離婚裁判を提起したい場合には、ご自身または相手方の住所地を受け持つ家庭裁判所に上記資料を提出する必要があります。
またその家庭裁判所と離婚裁判を提起する前に離婚調停を行った家庭裁判所が異なる場合には、離婚調停を取り扱った家庭裁判所に提出することもでき、その家庭裁判所が、調停の経過や当事者の意見等を踏まえて必要があると認めるときに、そのまま離婚訴訟を取り扱うこともあります。
③ 第1回口頭弁論期日の通知
口頭弁論とは、裁判官の面前で、自己の主張や、それを裏付ける証拠について口頭で述べる手続を言います。
原告は、裁判所に訴状を提出しているため、第1回の口頭弁論までにこれ以上準備するものはありませんが、被告は、この訴状に対する回答を記載した答弁書と呼ばれる書面を提出する必要があります。
答弁書も提出せず、第1回期日にも出席しなければ、原告の請求を全面的に認めたものとされてしまいます。
④ 口頭弁論期日の開催
先述した通り、口頭弁論は、裁判官の面前で、自己の主張や、それを裏付ける証拠について口頭で述べる手続を言います。
この期日は一般に公開されており、離婚裁判におけるいわゆる本番の場所で、ここで現れた主張や証拠に基づいて裁判所は判断を下すことになります。
⑤ 弁論準備手続きの開催
一方弁論準備手続きは、口頭弁論の前段階の手続きで、争点や互いの主張を整理し、裁判の進行を決定して、口頭弁論を円滑に進める準備をする場になります。
この期日は非公開で行われ、本番である口頭弁論を円滑に進めるため、自由で闊達な議論を行うことが期待されています。
⑥ 和解期日の開催
和解期日とは、当事者双方が譲り合って、離婚条件について合意することを目指す期日です。
離婚裁判になってまで合意できることなどないと思われる方もいるかもしれませんが、離婚裁判の期日の中で判決までいけばどのような未来が待っているのかが見えてくると、互いに争っても負けそうな部分については譲り合いながら、最終的に合意できることも意外と多いのです。
⑦ 当事者への双方尋問の開催
双方尋問とは、法廷において、証人や当事者が、当事者双方及び裁判官からの質問に答える形で、法廷で証言を行い、その証言の内容を証拠とする手続きを言います。
ここでは、当事者双方で譲れず争いになっている部分、言い換えれば、裁判官がどちらが正しいのかを判断する必要がある部分について質問されることになります。
⑧ 結審
結審とは、当事者の双方が、自身の主張したいことを全て主張し、提出したい証拠を全て提出し切った状態、いわば、裁判官の判断を待つだけの状態になることを言います。
裁判官は、この時点までの主張や証拠を元に判決を書くことになるため、この段階になるまでに、主張や証拠の提出をしておく必要があります。
⑨ 判決・離婚届の提出
離婚裁判において、離婚の判決が出て、控訴もされずこれが確定した場合には、確定した日から10日以内に離婚届を提出する必要があります。
離婚裁判内で、和解をした場合にも、和解成立の日から10日以内に離婚届を提出する必要があります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚裁判を弁護士なしで行う場合にかかる費用
離婚裁判を弁護士なしで行う場合には、先述した印紙代や郵券代といった、裁判所に納める費用だけ必要になります。
離婚裁判における郵券代は一般的に6000円とされています。
印紙代は、離婚裁判で何を求めるかによって変わってきますが、離婚のみの請求であれば、1万3000円の収入印紙が必要です。
弁護士に依頼した場合にかかる費用
弁護士に依頼した場合には、裁判所に納める上記の裁判費用に加えて、弁護士費用がかかります。
弁護士費用については、各法律事務所によって異なりますが、離婚訴訟では書面の作成や、尋問等、弁護士の労力も大きいため、着手金と成功報酬を合わせて100万円から200万円程度となるのが一般的です。
弁護士なしでも離婚裁判を有利に進めるには?
先述した通り、離婚裁判において、法律の専門家の助言なく、有利に進めることは非常に困難です。
弁護士なしでも離婚裁判を有利に進めるためには、適宜法律相談を利用して、自身の主張が法的に有効かどうかを法律の専門家である弁護士に確認してもらい、また弁護士の助言をうけて適宜証拠となりそうなものを保存していく等の行動を取る必要があります。
離婚裁判を検討中であれば、法律の専門家である弁護士に依頼することをおすすめします
以上述べてきた通り、離婚裁判において、弁護士を付けずに自身で対応していくことは、一時的には弁護士費用が発生せず自身の利益になるように思えても、結果的に自身に不利益な判決を受け、経済的にマイナスとなる可能性は高いと言えます。
離婚裁判を検討中の場合には、ぜひ法律の専門家である弁護士に依頼することを強くお勧めします。
弁護士法人ALGには離婚問題に精通した弁護士が多数在籍しておりますので、離婚裁判をお考えの方は是非一度、お早めにご相談ください。

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保有資格弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53982)
