監修弁護士 大西 晶弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士
「配偶者から心無い言葉を言われる」「何を言っても否定をされる」「自分の自由がない」
このような配偶者の行動は“モラルハラスメント”(モラハラ)に該当する場合があります。温かく、心休まる家庭が、モラハラ加害者である配偶者によって苦痛を感じる場所になると、「離婚したい」と考えるのは当然のお気持ちでしょう。
モラハラは立派な離婚原因です。しかし、モラハラを理由に慰謝料を請求したり、裁判でモラハラを理由に離婚を認めてもらうためには、証拠がなにより重要です。
この記事では、モラハラの証拠として有効なものについて、詳しく解説していきます。
目次
モラハラ加害者と離婚したい場合は証拠を用意しておく
モラハラ加害者である配偶者と離婚したいとお考えの場合は、まずは証拠を集めるようにしましょう。
多くの夫婦は、「協議離婚」という夫婦の話し合いで離婚を成立させています。このように、離婚についての話し合いで双方が離婚に合意すれば、必ずしも証拠は必要ありません。
しかし、モラハラ加害者は自分がモラハラをしているという自覚がなく、離婚に同意してくれないことも多くあります。
そのため、証拠を集めておくことで、夫婦の話し合いの際にモラハラがあったことを主張することができ、離婚に応じてくれる可能性も高まります。また、調停や裁判などに移行した場合も証拠があることで有利に働くことが期待できます。
モラハラの証拠として有効なもの
モラハラの証拠として有効なものを6つ紹介します。
- 日記やメモ
- 録音・録画データ
- メール、LINEなどのSNS
- 診断書や通院履歴
- 第三者の証言
- 警察や専門機関への相談履歴
こうしたものから「いつ・誰が・誰に・どんなことをして・どんな被害を受けたのか」を証明していきます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
モラハラの内容を記載した日記やメモ
モラハラの内容を記載した日記やメモはモラハラの証拠となり得ます。最近では、日記のアプリなども普及しており、手書きでもスマホやパソコン、アプリなど様々な方法で残すことができます。しかし、デジタルの日記やメモは、後から書き直しがしやすく証拠としての信用度が落ちてしまうため、手書きで残しておくことをおすすめします。
その際、消えないボールペンなどを使用し、1日だけでなく継続的に記録するようにしましょう。
証拠になる日記の書き方
より有効な証拠となるよう、日記の書き方のポイントを押さえておきましょう。
- 具体的な内容を記載する
日時、場所、相手の様子、モラハラの内容など客観的に見て想像しやすい内容を意識しましょう。 - モラハラ被害を受けて感じたことを書き留めておく
精神科・心療内科の受診記録と合わせることで、モラハラと症状の因果関係を証明しやすくなります。 - 普通の日記を意識する
継続的に、家庭内・外の出来事を交えて記録することで日記の信ぴょう性が上がり、証拠から事実を認められやすくなります。
モラハラの現場を録音・録画したデータ
実際にモラハラをされている現場を録音・録画したデータはモラハラがあったことの動かぬ証拠となり、とても有効です。
録音・録画する際は以下の点に注意しましょう。
- 言動の一部始終を記録する
モラハラを部分的に記録しても編集や改ざんを疑われます。全体の流れが分かるように、モラハラの言動の前後が分かるようにしておきましょう。 - できるだけ多くのデータを記録する
モラハラが日常的に行われており、悪質であることを証明するために、なるべく多くのデータを残しましょう。
モラハラ加害者から届いたメールやSNS、LINE等
モラハラ加害者である配偶者から届いたメールやLINEなどのSNSも証拠となります。
特に以下の行動はれっきとしたモラハラに当てはまりますので、メールやLINEなどのSNSは 保護設定をかけたり、スクリーンショットを撮ったりして保管するようにしましょう。
- 被害者や家族、友人の人格を否定する
- 独自のルールを押し付け、強制してくる
- 被害者の行動を束縛・監視・制限する
また、メールなどのツールではなく、頻繁な電話で被害者の行動を監視・制限することもモラハラに該当します。電話の発信・着信画面をスクリーンショットし、保管しておきましょう。
医師の診断書や精神科・心療内科への通院履歴
モラハラをされた被害者は、心の不安や不眠など心身に不調が生じる場合があります。少しでも心の不調を感じた場合は、お近くの精神科や心療内科を受診しましょう。こうした通院履歴は、モラハラの証拠となることがあります。
通院する際は、初診時に配偶者からモラハラを受けていることを伝え、カルテに記入してもらってください。モラハラ加害者である配偶者からどのような扱いを受けているかは、話しにくいことと思いますが、心の不調とモラハラの因果関係を証明するために、医師にしっかり現在の状況を伝えることが重要です。
親族や友人等、第三者の証言
親族や友人等にモラハラを受けていたことを証言してもらうことも、有効な証拠となり得ます。
特に、実際に親族や友人がモラハラの現場に居合わせた場合や、親族や友人にモラハラの悩みを相談していたような場合は、証言や陳述書が証拠として役立つでしょう。
配偶者からモラハラの被害を受けている場合は、おひとりで悩まず、親族や友人に相談しましょう。
誰かに話すことだけでも心が軽くなり、安心できます。
警察・モラハラの専門機関への相談履歴
配偶者からモラハラを受けていることを、警察や専門機関へ相談した場合、その相談履歴がモラハラを受けていたことを裏付ける証拠となります。
ご自身の心の不調が深刻な場合や、モラハラが子供にまで影響を与えているような場合は、すぐに警察や専門機関に相談しましょう。
警察や専門機関では、相談があった日時や相談の内容が記録されるようになっており、証拠として必要になった場合は自己開示請求をすることで、相談履歴を入手することができます。
警察など専門機関への相談は大袈裟なことではなく、大事なことです。ためらわず、有効に活用しましょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
証拠を集める上での注意点
ここまで、モラハラの有効な証拠について解説してきました。
次に、その証拠を集めるうえでどのようなことに注意すべきか見ていきましょう。
いつでも録音できるようにしておく
モラハラは何気ない行動で急に始まったり、前触れなく怒り出したりすることが多く、それに合わせて録音や録画を開始することは難しいでしょう。そのため、いつでも録音・録画できるよう、以下のような準備をしておくことが大切です。
- 普段からボイスレコーダーをポケットに忍ばせておく
- スマートフォンの録音アプリを起動しておく
ただし、モラハラ加害者である配偶者に気付かれないように注意することが大切です。
データのバックアップを取っておく
録音や録画などの証拠が取れたら、必ずデータはバックアップを取っておくようにしましょう。
モラハラ加害者である配偶者が証拠の存在に気付き、データを消されてしまうことも考えられますし、スマートフォンが壊れてしまう可能性もあります。
そのような予期せぬ状況に備え、複数の媒体でバックアップを取っておくこと、データは随時クラウドで保存しておくことが重要です。
どうしてもモラハラの証拠が集められないときは
モラハラの被害は、突発的であり、いつ起こるのか予想が難しいため、証拠集めが難しい場合があります。
どうしてもモラハラの証拠が集められないときは、以下の対処法をご検討ください。
- 別居する
別居が3~5年続けば、裁判により「婚姻関係が破綻している」とみなされ、離婚が認められる場合があります。ただし、何も言わず勝手に家を出てしまうと「悪意の遺棄」としてこちらが不利になってしまう場合があるため、注意が必要です。 - 弁護士に相談する
弁護士に相談することで、モラハラの証拠の集め方やモラハラ加害者である配偶者との交渉、裁判所の手続きなど被害者の精神的負担が軽減するようサポートしてもらえます。
別居については、以下のページで解説しています。あわせてご覧ください。
離婚前の別居で知っておきたいポイントモラハラの証拠集めに関するQ&A
モラハラの証拠として無断で録音することは犯罪にならないのでしょうか?
無断で録音することに抵抗感を覚える方もいらっしゃるでしょう。しかし、基本的に犯罪となることはありませんので安心してください。
ただし、録音・録画データを第三者に漏らしたり、SNSにアップするなど悪用すると、プライバシーの侵害として違法性を問われる可能性もあります。
録音・録画データはご自身や弁護士だけで保管するようにしましょう。
日記や録音データ等の証拠は、どのくらいの期間集めると良いのでしょうか?
日記や録音データ等の証拠については、できるだけ長期間集めるとより有効です。
期間の目安は以下のとおりです。
- 日記…半年以上、継続的にこまめに記録する
- 録音・録画データ…長期間、複数回にわたって記録する
- 精神科・診療内科の受診…1回で受診を終わらせず、定期的に通院する
子供の証言はモラハラの証拠として認められるでしょうか?
子供が10歳前後であれば、子供の証言がモラハラの証拠として認められる可能性があります。しかし、子供が幼児や低学年の場合は、まだ自分で物事の判断ができず、証言の信ぴょう性が低いため、証拠として扱ってもらえる可能性は低くなってしまいます。
もっとも、年齢に限らず子供に証拠としての証言を求めることは、精神的負担をかけてしまうおそれもあるため、最大限の注意を払いましょう。
経験豊富な弁護士がアドバイスさせていただきます
配偶者からモラハラ被害を受けていると、「離婚したい」というお考えになるのは当然のお気持ちです。
あなたやお子様がモラハラを受けるべき理由は一つもありません。モラハラで離婚をお考えの場合は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
弁護士法人ALGには、夫婦問題や離婚に詳しい弁護士が多数在籍しており、有効な証拠の集め方のアドバイスから、配偶者との交渉、裁判所の手続きなどご相談者様の味方となって尽力いたします。
モラハラは許されるものではなく、誰も我慢するべきではありません。弁護士が味方となってご相談者様の明るい未来のためサポートしていきます。
モラハラの被害でお悩みの場合は、まずは一度私たちにお話をお聞かせください。
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保有資格医学博士・弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53982)