監修弁護士 大木 昌志弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士
交通事故に遭ってしまい、保険会社から提示された過失割合に納得できず、不安やストレスを抱える方は少なくありません。
過失割合は賠償金に大きな影響を及ぼすため、少しの違いでも受け取れる金額が大幅に変わる場合があります。
しかし、事故の状況に関する証言の食い違いや証拠不足などによって意見が対立し、話し合いがスムーズに進まなくなるおそれがあります。
この記事では、過失割合で揉める理由や揉めやすいパターン、行うべき対応などについて分かりやすく解説します。
目次
交通事故の過失割合で揉める理由とは?
交通事故で過失割合について揉める理由として、主に以下のようなものが挙げられます。
- 損害賠償の金額に影響するため
- 警察は過失割合に関与しないため
- 事故状況の食い違いがあるため
過失割合の影響は大きいため、話し合いが難航しやすいのが実情です。
損害賠償の金額に影響するため
過失割合は、被害者が最終的に受け取れる損害賠償の金額に大きな影響を与えます。
被害者が受け取れる治療費や修理費などは、過失割合が1割だけ変わっても、受け取れる賠償金額が1割程度減ってしまうからです。
そのため、相手方保険会社は自社の支払額を抑えようとして、加害者の過失割合を低く主張してくるケースが多いです。
被害者としては納得しづらい場面が多く、適正な賠償金を得るためには争う必要があるため、揉め事の大きな原因になります。
警察は過失割合に関与しないため
交通事故が起きると、警察は実況見分を行って、事故発生の経緯や現場状況を確認しますが、過失割合を決めることはありません。
警察は、あくまでも事実関係の記録を作成するだけです。
過失割合は、基本的には保険会社から通知されます。
不服がある場合には、当事者などによる協議によって決めるか、裁判所によって判断されます。
過失割合は、警察などの公的な組織によって決められないため、双方の主張がぶつかり、話がまとまらないケースが多く見られます。
事故状況の食い違いがあるため
交通事故の現場では、当事者の双方が、自分が認識できた状況から責任の重さを判断しがちです。そのため、進路変更のタイミングやお互いの速度、相手車両との位置関係などについて認識がズレることは珍しくありません。
特に、瞬間的に起こる事故ほど記憶が曖昧になり、主張が大きく食い違います。双方が、相手が悪いと非難して譲らないケースも多いです。
お互いの主張の食い違いによって、過失割合の協議は複雑になり、話し合いが長引く大きな原因となります。
過失割合について揉めやすい4つのパターン
①交通事故に関する証拠が不足している
交通事故の過失割合でもめやすい典型的な原因として、証拠の不足が挙げられます。
ドライブレコーダーを設置していない場合や、事故現場に目撃者がいない場合では、どちらの主張が正しいのかについて判断が難しくなります。
駐車場や私有地などでは監視カメラが設置されていないケースも多いため、事故の瞬間を客観的に示す資料が乏しくなりがちです。
証拠が不十分な状況では、当事者双方の主張が対立して、過失割合の話し合いが長引いてしまうおそれがあります。
証拠が無い場合の対処法
証拠が不足していても、できる限り客観的な資料を集めることによって、過失割合の判断に役立てられます。
相手方の車両にドライブレコーダーが付いていれば、データの開示を求めましょう。
また、双方の車両の損傷状況や衝突した位置、破片の散らばり方、自身のケガの部位と程度も事故状況を推測する手掛かりとなります。
現場の写真や病院での診断書など、後からでも取得できる証拠を確保して、なるべく多くの資料を揃えておきましょう。
②損害賠償額が大きい
交通事故による被害が大きいと、相手方保険会社が支払額を抑えようとして、被害者側に不利な過失割合を主張してくる場合があります。
事故の被害が大きいと、治療費や慰謝料、休業損害などの損害賠償が高額になります。
そのため、重度の後遺障害が残る事故や死亡事故などでは、わずかな過失割合の違いでも賠償額が大きく変わってしまうので、交渉がこじれやすくなります。
被害者にとっては、高い過失割合を押しつけられることに納得できないため、交渉が長期化する原因となります。
損害賠償額が大きい場合の対処法
損害賠償額が高額になる場合には、相手方の保険会社から、過失割合の根拠を説明してもらいましょう。
保険会社からの主張が強引になっていることが珍しくないため、なるべく書面で説明を受けるのが望ましいです。また、治療記録や修理見積書など、請求の裏付けとなる資料をなるべく揃えておきましょう。
保険会社との交渉に不安がある場合には、早めに弁護士へ相談することにより、適正な過失割合を判断してもらえるため賠償額を確保しやすくなります。
③どちらが悪いか判断がしにくい
事故によっては、どちらの過失が大きいのかを判断しづらいため、話し合いが長引く場合があります。
例えば、以下のようなケースが挙げられます。
- ①双方が赤信号だったのに交差点へ進入して衝突した事故(5:5)
- ②ほとんど同じ幅の道路からなる交差点で、直進する自動車と、交差道路の左方から左折するために進入した自動車が衝突した事故(5:5)
- ③広い道から減速せずに交差点へ直進した自動車と、狭い道から減速しながら交差点へ進入した自動車が衝突した事故(6:4)
判断がしにくい場合の対処法
どちらの過失が大きいか判断しにくい事故では、なるべく多くの証拠を確保しましょう。
現場写真や破片の位置に関する情報、ブレーキ痕、車両の損傷具合、目撃者の証言など、後からでも集められる情報はすべて残す必要があります。また、防犯カメラや店舗カメラの映像が残っている可能性もあります。
一定期間を過ぎるとデータが削除されるため、早めに確認することが有効です。
証拠が揃っていれば、お互いの速度の実態などが判明して、保険会社との交渉や裁判での立証に役立つ可能性が高いです。
④駐車場内での事故
駐車場内で事故が発生すると、道路とは異なる独特の環境であるため、過失割合で揉めやすい傾向があります。
見通しが悪く、歩行者や自動車の動きが錯綜しやすいなど、どちらの過失が重いかについての判断が難しいケースが多いのが特徴です。
また、一般的な過失割合の基準として用いられる別冊判例タイムズという書籍は、主に道路上での事故を前提としているため、駐車場内の事故に関するデータは十分ではありません。
結果として、保険会社同士の解釈が分かれて対立してしまうケースが少なくありません。
駐車場内の事故の対処法
駐車場内で事故が起こったら、現場の写真を細かく撮影して、お互いの自動車の動きが分かる情報をできるだけ残しておきましょう。
また、店舗や施設に防犯カメラがある可能性は高いので、映像の有無を確認する必要があります。
道路と異なり過失割合の基準が明確でないため、駐車場の事故に詳しい弁護士による判断が必要な場合が多いです。
駐車場ならではの状況であれば過失割合の争いになりやすいため、弁護士に相談することをおすすめします。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の過失割合で揉めた場合はどうする?
保険会社へ苦情を申し入れる
提示された過失割合に納得できない場合には、相手方の保険会社の担当者へ、必要に応じて説明を求めることが可能です。
相手方が任意保険に加入している場合には、実際の交渉相手は保険会社です。そのため、説明は保険会社から受けます。
自身も任意保険に加入しているのであれば、基本的には保険会社が示談を代行してくれるため、対応を任せるのが安全です。
どうしても不満であれば、弁護士に相談・依頼すれば交渉を代理してもらえます。
ADRを利用する
過失割合についての話し合いが、保険会社との交渉だけでは解決しない場合には、ADR(裁判外紛争解決手続)を利用することが有効です。
ADRとは、中立的な第三者が当事者の間に入って、裁判所を利用せずに話し合いによって紛争を解決する制度です。
交通事故では、交通事故紛争処理センターなどを利用できます。
交通事故紛争処理センターは、無料で利用することができて、専門知識を持つ弁護士が関与しながら速やかな解決を図れるため、安心して活用できます。
調停や裁判で解決する
保険会社との交渉やADRでも解決が難しい場合には、簡易裁判所の調停や、裁判によって過失割合を決めます。
調停とは、裁判所において調停委員が双方の意見を聞き、中立的な立場から合意点を探る手続です。
当事者の直接対立を避けながら話し合いを進められることが大きな特徴です。
時間や費用の負担を抑えながら、専門的な視点を踏まえた解決が期待できます。
裁判は最終手段として用いられます。裁判を起こすと、提出された証拠に基づいて裁判所が過失割合を判断し、判決を下します。
判決は強制力を持つため、最終的な解決が可能となりますが、裁判では証拠の重要性が極めて高くなります。
事故状況を示す資料をどれだけ揃えられるかが勝敗を左右します。
妥協案として片側賠償を提案する
過失割合の協議が難航して、双方の主張が平行線をたどる場合には、片側賠償(片賠)という妥協案を提示する場合があります。
片側賠償とは、本来は過失があるものの、交渉がまとまらない状況を打開するために、どちらか一方だけが賠償金を支払うことで早期解決を図る方法です。
たとえば、過失割合9:1で折り合わないケースでは、過失割合9:0ということにして解決できることがあります。ただし、片賠は法的に定められた制度ではなく、あくまで当事者の合意による特別な対応です。
将来的な紛争リスクや妥当性を十分に理解したうえで判断する必要があるため、提案を受けた場合や逆に提案したい場合には、事前に弁護士へ相談することを強くおすすめします。
弁護士に相談・依頼する
過失割合の争いが長引いて、精神的な負担が大きくなる前に弁護士へ相談しましょう。
弁護士であれば、過失割合をなるべく有利にするための交渉を代理することができます。
また、証拠の収集方法や事故状況の整理など、専門的なサポートを行ってもらえる点も大きなメリットです。
弁護士基準の慰謝料を前提として交渉するなど、賠償金額を引き上げるための交渉も併せて依頼できます。
交通事故で弁護士に相談するメリットについては、以下の記事をご覧ください。
交通事故を弁護士に依頼すべき6つのメリット交通事故の過失割合について揉めた場合は、お早めに弁護士にご相談ください
過失割合についての争いは、保険会社との主張の食い違いや、証拠の不足などによって長期化しがちです。
対立を長引かせると、賠償金などを受け取るのが遅くなってしまったり、精神的な負担が大きくなったりする場合が少なくありません。
弁護士法人ALGでは、交通事故の事案について経験の豊富な弁護士が多数所属しており、過失割合を有利に修正できた解決事例も多いです。
早い段階で相談していただければ、なるべく有効な証拠を揃えて、適正な賠償を受けられる可能性が高まります。
弁護士が介入すれば、保険会社が主導していた交渉で優位に立ち、交渉のペースを取り戻しやすくなります。
過失割合で揉めている方は、問題が深刻化する前に、ぜひ私たちへご相談ください。

-
保有資格弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53980)
