
監修弁護士 大木 昌志弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所 所長 弁護士
事故の衝撃で頭部が揺さぶられ、首に強い負荷がかかることによって引き起こされる“むちうち”は、交通事故の代表的なケガのひとつです。
むちうちは、事故後時間が経って症状があらわれたり、症状を医学的に証明しにくく、「慰謝料に納得できない・・・!」と思われている被害者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、【むちうちの慰謝料の相場】に着目して、慰謝料の算定方法や、適切な通院の仕方について詳しく解説していきます。
適正な慰謝料を獲得するための参考になれば幸いです。
目次
むちうちで請求できる慰謝料は2種類ある
交通事故でむちうちになった場合に請求できる慰謝料は、“入通院慰謝料”と“後遺障害慰謝料”の2種類です。
入通院慰謝料 | 入通院慰謝料は、むちうちで入院や通院を強いられたことによる身体的・精神的苦痛に対する慰謝料です。入院や通院をした場合に請求することができます。 |
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後遺障害慰謝料 | 後遺障害慰謝料は、むちうちで後遺症が残ってしまったことによる身体的・精神的苦痛に対する慰謝料です。後遺障害等級認定された場合に請求することができます。 |
むちうちの慰謝料相場
交通事故のむちうちの慰謝料相場は、入院や通院した【治療期間】や、認定された【後遺障害等級】によって変動します。
また、治療期間や後遺障害等級といった条件は同じでも、慰謝料の算定に用いる【算定基準】によっても異なるため、入通院した場合の慰謝料と、後遺障害が残った場合の慰謝料での相場を、次項で詳しくみていきましょう。
通院のみの場合の慰謝料相場
月10日通院した場合の慰謝料相場
通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 (他覚所見あり/なし) |
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1ヶ月 | 8万6000円 | 28万円/19万円 |
2ヶ月 | 17万2000円 | 52万円/36万円 |
3ヶ月 | 25万8000円 | 73万円/53万円 |
4ヶ月 | 34万4000円 | 90万円/67万円 |
5ヶ月 | 43万円 | 105万円/79万円 |
6ヶ月 | 51万6000円 | 116万円/89万円 |
上記表は、むちうちで月に10日通院した場合の入通院慰謝料の相場を、自賠責基準と弁護士基準で比較したものです。
弁護士基準は、むちうちについて他覚所見があるかどうかによっても金額が異なりますが、いずれも自賠責基準より高額になることがわかります。
♦他覚所見とは?
他覚所見とは、画像検査・神経学的検査・理学的検査・臨床検査などにより、自覚症状を客観的に捉えることができる異常所見のことです。
同じ治療期間でも、他覚所見がある場合とない場合とでは、相場が大きく変わります。
入院した場合は金額が上がる
むちうちで入院した場合、どの算定基準を用いたとしても、通院のみの慰謝料相場よりも高額になる傾向にあります。
どのくらい慰謝料額が上がるのかお知りになりたい方は、当法人までお気軽にお問い合わせください。
後遺障害が残った場合の慰謝料相場
後遺障害が認定された場合の慰謝料相場
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
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12級13号 | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
上記表は、むちうちで認定される可能性がある後遺障害等級と、障害等級ごとの後遺障害等級慰謝料の相場を比較したものです。
むちうちの後遺症が後遺障害等級認定された場合、入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料を請求することができます。
♦12級と14級の違いは?
むちうちの後遺障害等級の12級と14級の違いは、「他覚所見があるかどうか」です。
- 障害等級12級 ・・ 他覚所見があって、自覚症状を医学的に証明できる場合
- 障害等級14級 ・・ 他覚所見はないが、自覚症状を医学的に説明できる場合
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
むちうちの入通院慰謝料を計算する方法
入通院慰謝料は、治療期間によって慰謝料の相場が変動します。
以下、【他覚所見のないむちうちで、入院なし・通院期間3ヶ月(90日)・実通院日数30日】だった場合の入通院慰謝料を、算定基準ごとに実際に計算していきましょう。
※ 算定基準のうち、任意保険基準の算定方法は詳細が非公開となっているため、説明を割愛します。
自賠責基準
自賠責基準は、自賠責保険が慰謝料の算定に用いる基準です。
基本的な対人賠償の確保を目的としていて、自動車損害賠償保障法施行令で定められた慰謝料4300円/日が、対象日数分支払われます。
【自賠責基準の入通院慰謝料の計算方法】
自賠責基準では、次の2つの計算式のうち、金額が少ない方を採用します。
①日額4300円×治療期間(入院期間+通院期間)
➡ 例をあてはめると、4300円×通院期間90日=38万7000円
日額4300円×(入院期間+実通院日数)×2倍
➡ 例をあてはめると、4300円×実通院日数30日×2倍=25万8000円
したがって、このケースにおける自賠責基準の入通院慰謝料は、25万8000円となります。
弁護士基準
弁護士基準は、裁判所や弁護士が慰謝料の算定に用いる基準です。
過去の裁判例をもとに設定された2種類の入通院慰謝料算定表を用いて、入院期間と通院期間を基準に、慰謝料が支払われます。
【弁護士基準の入通院慰謝料の計算方法】
弁護士基準では、赤い本(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)を用いて算定します。
別表Ⅱ(他覚所見なし)の、入院期間0ヶ月(ヨコ軸)と通院期間3ヶ月(タテ軸)が交わる箇所をみると、弁護士基準の入通院慰謝料は、53万円であることがわかります。
※他覚所見のあるむちうちの場合は、別表Ⅰの算定表を使います。
主婦の場合でも慰謝料は受け取れる?相場に違いはある?
むちうちの慰謝料は、主婦の方であっても受け取ることが可能です。
慰謝料は、相手の不法行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償なので、職業や収入によって計算方法が変わることはなく、会社員の慰謝料相場より少なくなることもありません。
ただし、家事や育児で医師の指示通りに通院できず、通院頻度が極端に少ないと慰謝料が減額されてしまったり、後遺障害等級認定が受けられなくなるおそれがあるので注意しましょう。
主婦の慰謝料や休業損害について、詳しくは以下の各ページをあわせてご覧ください。
主婦が交通事故に遭った場合の慰謝料について 主婦の休業損害 | 専業主婦・兼業主婦の場合適正な入通院慰謝料には適切な通院が重要
むちうちで適正な入通院慰謝料を受け取るためには、適切に通院することが重要です。
入通院慰謝料は、治療期間が長くなるほど高額になる傾向にありますが、だからといって多く通院すればたくさん慰謝料をもらえるわけではありません。
過剰診療を疑われて、かえって慰謝料が減額されるおそれがあります。
また、極端に通院回数が少ない場合も、軽症として扱われることで慰謝料が減額されることがあります。
そればかりか、まだ治療が必要なのにもかかわらず相手方保険会社から治療費の一括対応を打ち切られたり、後遺障害等級認定が獲得できなくなるリスクもあるので、医師と相談しながら、適切に通院するようにしましょう。
通院の段階から弁護士に相談すると、適切な通院のしかたについてアドバイスが受けられるのでおすすめです。
弁護士の交渉によりむちうちの慰謝料などを大幅に増額できた事例
【解決事例①】
当法人の弁護士が交渉した結果、むちうちの慰謝料を含めた損害賠償金が約95万円増額した解決事例をご紹介します。
<事案の概要>
右折待ちで停車していたご依頼者様が、後続車から追突されて、むちうち(外傷性頚部症候群、腰部捻挫等)を負い、後遺障害等級併合14級が認定された事案において、相手方保険会社から提示された賠償額が想定よりも低額であったことから、当法人にご依頼いただきました。
<弁護士の活動・結果>
相手方保険会社から提示された賠償額は、保険会社基準の約75万円で、弁護士基準のもと示談交渉を行った結果、約170万円にて示談が成立しました。
弁護士が迅速に対応したことで、ご依頼からおよそ1ヶ月で約95万円増額した事例です。
【解決事例②】
当法人の弁護士がむちうちの後遺障害等級認定のサポートと示談交渉をした結果、慰謝料を含めた損害賠償金が約93万円増額した解決事例をご紹介します。
<事案の概要>
運転中に後続車から追突されたご依頼者様が、頚部捻挫や背部挫傷により6ヶ月通院した頃に、相手方保険会社に一括対応を打ち切られ、提示された賠償金が約67万円と、想定よりも低額であったことから、当法人にご依頼いただきました。
<弁護士の活動・結果>
弁護士は後遺障害等級認定を申請すべきと考え、ご依頼者様と相談のうえ認定申請の手続を行ったところ、併合14級の後遺障害が認定されました。
これを踏まえ、弁護士が保険会社と交渉した結果、事前提示額から約93万円増額した約160万円で示談成立となりました。
交通事故によるむちうちの慰謝料請求は弁護士にお任せください
交通事故のむちうちは、客観的に症状を証明しにくいことが多いですが、適切な検査と治療を受け、医師の指示に従って通院すれば、きちんと慰謝料を受け取れる可能性があります。
むちうちの治療中に保険会社から治療費を打ち切ると言われたり、どのような検査を受ければ良いか迷ったり、通院頻度について不安に感じられた場合には、ぜひ治療を受けている段階から弁護士にご相談ください。
また、相手方から提示された慰謝料が少ないと感じられた場合は、弁護士が介入することで慰謝料が増額する可能性もあります。
交通事故のむちうちの慰謝料についてお困りの方は、一度弁護士法人ALGまでお気軽にご相談ください。
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保有資格医学博士・弁護士(千葉県弁護士会所属・登録番号:53980)